チョコレート支える児童労働 カカオ生産国、企業に責任求める
◆割増金回避、大手企業に生産国激怒
生産者の収入を増やし貧困を緩和しようと、コートジボワールとガーナでは豆の価格にLID(Living Income Differential)という割増金を今年10月から買い手に課している。ガーナの生産者団体の代表者は、生産コストに見合った負担をチョコレート業界にしてもらいたいとし、割増金を払っても、大手企業の利益は十分大きいはずだと主張している(フィナンシャル・タイムズ紙、FT)。
ところが11月になって、先物取引を通じてチョコレート製造の大手ハーシーがカカオ豆を大量購入したと報じられた。産地から直接買わないこの方法を利用した場合、買い手はLIDを支払う必要がない。コートジボワールとガーナの生産管理団体は、ハーシーに対し「西アフリカの農家を貧しくさせるデリバティブ市場の乱用」「非常に非倫理的で(同社が謳う)持続可能性のコンセプトに矛盾する」と非難する書簡を送った。
NBCニュースによれば、ハーシーは以前からサステナビリティ・プログラムのもと西アフリカ諸国と協力し、児童労働や環境破壊に関与しない製品を作るという姿勢を打ち出していた。今回の件で、コートジボワールとガーナがプログラムからハーシーを締め出すことを示唆したこともあり、同社がLIDを払うということで論争は終わったが、FTは生産者側が持つレバレッジの限界を示したと述べる。市場シェアの60%を占める両国が価格を決める事実上の力を持っていないことを指摘。環境や児童労働、所得の不公平への大衆感情に頼り、相手方の答を引き出すしかなかった、という関係者のコメントを紹介している。
◆コロナも影響 需給バランスに問題
FTは、問題の一部は、政府が出荷価格を高く設定することや、サステナビリティ・プログラムを増やすことで、生産意欲が高まり、その結果市場価格が下落することだと述べる。事実、カカオ豆の生産は過去5年間で18%増えている。価格を上げたいのなら、市場が必要とする量よりも多く生産しなければよいが、生産量が増えているため、コートジボワールとガーナは在庫を抱えてしまう可能性もあるという。
加えて多くのチョコレート製造会社やカカオ豆加工業者は、当初は高い価格を支払うことに同意していたものの、ロックダウンでチョコレート需要が低下し、これまでほどカカオ豆がいらなくなるか、安い供給先を見つけるかのどちらかになっているという(ブルームバーグ)。
ブローカーやアナリストは、収入増を望む零細農家と、マーケットシェアを伸ばそうとするライバル生産者のおかげで、コートジボワールとガーナの取り組みは難航すると予想。結局のところコモディティにおけるカルテルはうまくいかないとしている(FT)。
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