世界で模索、マスクの除菌再利用・リサイクル

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 現在、全世界で毎日膨大な数が消費され廃棄されている使い捨てマスク。その環境に及ぼす悪影響は、パンデミック当初より懸念されてきた。とくにマスクのポイ捨て現象には、付着しているかもしれないウイルスによる汚染や、生分解しないマスクの海洋ごみ化を心配する声が多く上がった。フランスでは、環境省が「マスクの正しい捨て方」啓蒙動画をツイートしたほどだ。この動画にあるように、使用後は焼却処分されるのが基本だが、そのリサイクル法も春ごろから研究されてきた。マスクとしての再利用方法のほか、材料のリサイクル方法まで、各地で進む研究に期待が高まっている。

◆マスクの消毒再利用方法
 マスクが品薄であった時期には、マスクを再利用するための消毒方法が各国で検討された。

 たとえば、中国の復旦大学の研究者は2月、マスクを食品用ラップフィルムでくるんで30分ヘアドライヤーで熱すれば、使用済みマスクの再利用が可能だという研究を報告している(上海日報紙、2/10)。

 ベルギーではワロン地域政府が、医療廃棄物の除菌とリサイクル専門のコンソーシアムをまとめるプロジェクトをリエージュ大学に委託した。その第一弾として、同大学は、国内複数の企業や研究センターとの提携で、マスクの消毒方法の研究を行った。同大学サイトによれば、過酸化水素処理やUV照射処理、プラズマ処理、乾熱処理、エチレンオキシド処理などが試され、いずれについてもポジティブな結果が出た。また、リエージュ宇宙センターもこのプロジェクトに参加し、得意とする真空技術を駆使した研究を行った(イノヴァテック誌、5/16)。

 同様の研究はフランスでも進んでいる。「とくにグルノーブル=アルプス大学病院とツール地方大学病院で実施された実験では、サージカルマスクについては、95度の洗浄とオートクレーブ(蒸気)、照射が有望な結果を出した。一方FFP2マスクについては、エチレンガスと、70度の乾熱がウイルスの痕跡を破壊する効果があるとみられる」という(フランス・アンフォ、8/22)。

 中米の例としては、コスタリカで開発されたUV-Cとプラズマ作用を用いるマスク殺菌装置が挙げられる(20minutes紙、7/28)。

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Text by 冠ゆき