罰金受けてもまた不法投棄 豪華クルーズ船が引き起こす環境汚染

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 新型コロナウイルス感染によるダイヤモンド・プリンセス号の乗客隔離で話題になったクルーズ船だが、実は船から廃棄されるゴミや汚水が環境汚染を引き起こし、各地で問題になっている。小さな自治体や国では対応に苦慮しており、優雅な旅を提供する豪華客船ビジネスの闇が指摘されている。

◆クルーズ船のゴミ捨て場? アラスカの町の苦悩
 アラスカで最も美しいと言われる町ジュノーは、人口約3万人のアメリカで最も隔絶された州都だ。山と海に囲まれ、市外に通じる道路も鉄道もなく、迷路のように絡み合った狭い路地に住宅や店舗、歴史的建造物が並んでいる。観光業が盛んで、水辺では漁船や水上飛行機と並んでクルーズ船が見られる。

 この小さな町のゴミ処分場に、2019年夏の観光シーズン中、1500トン以上のゴミがクルーズ船会社から持ち込まれた。この件に関する町の公聴会に参加した市民によれば、寝具、椅子、家具、スロットマシーンなど、さまざまなゴミが捨てられていたという。プリンセス・クルーズとホーランド・アメリカラインの陸上業務担当者によれば、大気汚染防止のため、近年多くのクルーズ船に、排気から汚染物質を出さないための装置が取り付けられている。設置スペースを作るため、船内の焼却炉が撤去され、それが陸に上げられるゴミの増加につながっているという(アラスカ・パブリック・メディア)。

 住民は外からのゴミの持ち込みに懸念を示しているが、実はゴミ処理場はテキサス州の民間企業が経営しており、町がゴミに関する規制をすることはできない。クルーズ船からのゴミは、町から出る年間のゴミの5%ほどだと言うが、この処分場はあと20年でいっぱいになるとされている。新しい処分場を造るだけのスペースは町にはなく、行政側も頭を悩ませている(同上)。

Text by 山川 真智子