英大学、牛肉の販売停止へ「温暖化対策のため」 ビーフハンバーガーなど消える

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◆国連も認めた、牛肉は温暖化防止の敵
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を止めるためには、肉食をやめることが有効という見解を示している。CNNによれば、家畜は多くの温室効果ガスを排出し、全世界の排出量の14.5%を占めるという。そのうち41%は肉牛によるものだ。

 ガーディアン紙のコラムニスト、ゾーイ・ウィリアムス氏は、肉牛飼育には豚や鶏の28倍の土地、11倍の水が必要で、温室効果ガスの排出量も5倍だと指摘。最終的には環境のために肉食をやめ、植物性の食品にシフトするべきとして、取りかかりとして牛肉をやめるのは良い考えだとする。人は何かと理由をつけて好きなものを食べたがるが、これが変化の必要性を阻害するものだと指摘。禁煙でさえも最初は公共交通機関だけだったのが、いまではあらゆるところで当たり前となっているのだから、食生活を変えることも可能だと見ている。

◆何を食べるかは個人の自由 妥協案が必要
 一方、テレグラフ紙に寄稿した文筆家のシャーロット・ギル氏は、気候変動のための活動が個人の自由を侵害するのは問題だとする。大学とは親元から離れた子供たちが初めて自由を経験する場所だとし、教育機関である大学が親のバトンを引き継いで食べ物にどうこう言うというのはいかがなものかと疑問を呈している。また、肉のロースト料理が好まれるイギリスでその選択を奪ってしまうのは、気候変動に対する取り組みに対する敵意を植えつけることにもなりかねないと述べている。

 同氏は16年間倫理的理由から肉を食べていないが、牛肉禁止はあまりに安易で反射的だと断じる。一切食べるなというのではなく、畜産農場で育った牛より、より温室効果ガスの排出が少ない放牧で育てられた牛を選ぶなど、妥協点を見つけるべきだと主張。また個々が温室効果ガス削減における役割を果たせるよう、大学は学生にアイデアや情報を提供すべきだとしている。

 もっともBBCによれば、学生自治会側は大学側の方針に賛成し協力する意思を示している。ただギル氏によれば、ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジでは昨年「肉なしの木曜日」を制定したところ、学生が抗議し「木曜ステーキクラブ」を立ち上げるという事件もあったということだ。

 ゴールドスミス・カレッジの学生数は約1万人。新ルールは新学年の始まる9月より適応され、ビーフを使ったハンバーガー、ブリトーなどの人気メニューがなくなるということだ。まずは新学期が始まった後の一般学生の反応に注目したい。

Text by 山川 真智子