ハワイ望遠鏡計画、セレブが先住民の抗議運動に参加 スペインが誘致に意欲

Hollyn Johnson / Hawaii Tribune-Herald via AP

◆TMT第2候補地のスペインが誘致作戦開始
 ハワイアンによるマウナケアにおけるTMT建設に対する抗議行動への支持が広まるなか、地元紙スター・アドバタイザー(電子版)は7月31日、デービッド・イゲ知事は先に発していた非常事態宣言を同日撤回したと報道。これで一段とTMT建設がいつ開始されるのか状況が不透明になってきた。

 一方、ハワイのそんな様子を静かに伺いつつ、TMTの誘致行動に乗り出してきたのがスペイン政府だ。なぜスペインかというと、TMT建設の第2候補地がスペイン領カナリア諸島だったからである。スペイン政府としては、経済や科学に今後大きな利益をもたらすと予想されるTMTは、ぜひとも自国に招きたいプロジェクトなのだろう。しかも、カナリア諸島にはマウナケアのような先住民による抗議運動の懸念はない。

 KITV(電子版)の記事によると、同国のペドロ・デュケ科学相は「ハワイで起きている騒動を見て我々は心配しており、TMTをほかの場所に建てて欲しい」と発言。またデュケ科学相は、「TMTがスペインに来るならば、(カナリア諸島の天体望遠鏡を司る)理事会は全会一致で賛成するし、資金も用意されている」とも述べ、TMT側に熱烈なラブコールを送った。デュケ科学相は元宇宙飛行士でもあるため、TMT誘致にも人一倍熱心であることだろう。

 セレブからの支援も追い風となり、マウナケアにおける抗議行動は現時点で収まる気配が見られない。ハワイ州政府もハワイ先住民への文化的・歴史的配慮や、抗議行動拡大に対する恐れから「キアイ」に徹底抗戦する姿勢をまったく見せておらず、マウナケアにおけるTMT着工は、少なくとも現在の状態では半ば不可能だろう。スペインが熱心な誘致行動を開始した一方で、TMT側ではいまもマウナケアへの強いこだわりを見せており、今後の展開にハワイだけでなく世界中から注目が集まっている。

Text by 川島 実佳