インパクト投資、25兆円規模に拡大 主流化に向けての課題とは?

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◆「インパクト・ウオッシュ」
 近年のインパクト投資の成長の背景には、大手ファンド運営会社によるインパクト投資への参入が挙げられる。しかし、インパクト投資経験の浅い企業が増えるにつれて、インパクトの定義、評価の仕方の問題があやふやになるのではないかという懸念もされている。この危険性はブレーン・ウォッシュ(英語で「洗脳」の意味)からできた造語「impact-wash(インパクト・ウォッシュ)」とも呼ばれている。

 社会的インパクトがあってのインパクト投資。運用資産額の増加とともに社会的にもたらすインパクトの増加を期待するのが当たり前だ。

 インパクト投資に関わるメンバー226団体を対象に行ったアンケートに基づいているGIINレポートでは、インパクト・ウォッシュの問題に関して、アンケート回答者の8割は投資家に対してのインパクト評価などの情報の開示を広めることを解決策として挙げている。しかし社会インパクト評価の統一が困難なのが現状だ。

 第三者によるインパクト投資の認証や行動規範の設定なども解決策として挙げられているが、実際に実行するのは難しいだろう。

◆アジアでの成長
 GIINのレポートによると、世界的に見てもアジアへの投資額が低いことがわかる。特に東アジアは2017年の投資総額の4%と、北アフリカの4%と並んで最低レベルである。

 シンガポールに本部を置く資金提供者たちのネットワークAVPN(Asian Venture Philanthropy Network)によると、インパクト投資の概念が浸透していない、インパクト投資を支えるエコシステムが未熟、投資家のリスクに対する認識、などがアジアにおけるインパクト投資発展の問題として挙げられている。

 アジアにおいてはロックフェラー財団など、インパクト投資において革新的な取り組みを行なっている財団が欧米に比べて少ないのも大きな理由だろう。

 将来アジア地域の資産総額成長が予測されるため、インパクト投資の成長も期待されている。

 本当の意味での主流化には課題が残るが、より一層の成長が期待されるインパクト投資。「全ての投資をインパクト投資に」と願う投資家も少なくない。地球が無ければ、消費者がいなければ、企業は成り立たないと考えれば、長期的に見て生き残れるのは持続可能性がある企業、つまり環境・社会・経済を考慮する企業のみ、とも言える。ミレニアル世代が牽引すると見られるインパクト投資、今後の動きに注目だ。

Text by 中川沙和