ウーマノミクス 海外の反応まとめ

 安倍内閣が掲げる「ウーマノミクス」が、国内外で大きな議論を巻き起こしている。

 安倍政権は、自身の経済成長戦略「アベノミクス」の柱の1つとして、「女性の活躍推進」を掲げている。2020年までに女性管理職を30%程度とすることを政府目標とし、厚生労働省が臨時国会に提出するための女性の活躍推進法案の枠組みを決定した。

 ウーマノミクスとは、女性の労働環境を整備し企業での活躍をうながすことで、経済を活性化させようという意味を表す言葉で、提唱者の松井氏は、女性の労働環境の改善は日本にとっての喫緊の課題であると主張する。

 また、海外メディアの多くは、日本において女性は雇用、昇進、賃金あらゆる面において差別を受けていると伝えている。

 以下、昨今の主要な海外の反応をまとめる。

1)女性の労働改善で日本のGDP13%上昇 海外は“喫緊の課題”と報じる

 ゴールドマン・サックス証券マネージング・ ディレクター松井氏のレポートによると、日本国内での女性の労働力は昨年62.5%に上昇したが、まだ男性の80.6%に過ぎない。この男女間の差が埋まれば、GDPは13%上昇するという。

 海外メディアは現代の日本が抱える問題として、労働力市場の縮小、労働力不足、経済の回復の速度が遅いことをあげ、これらの問題解決のための手段として、多様な労働力を取り込む必要性をあげている。

『バリューワーク』では、女性の雇用促進の考え方は決して新しいものではないとしながらも、これを喫緊の課題としている。

(松井氏は、女性の労働力上昇は、少子高齢化の圧力を軽減し、日本経済の長期潜在成長力を押し上げる効果がある。ウーマノミクスは長期的な投資テーマになる可能性が高いという。)
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2)“仕事と家庭、なぜ両方を選べない?” 日本の女性の労働環境に、海外から疑問

 デイリー・テレグラフ紙は、「仕事か家事か。なぜ日本人女性はいまだにその選択を迫られるのか」と題した記事を掲載。問題の核は、伝統と酷い企業文化、育児施設の不足だという。

 ロサンゼルス・タイムズ紙は、大和総研の河口真理子主席研究員が、女性の社会進出について、文化的に大きく根を張った問題だ、としている。同氏は、いまだに日本社会の「性的役割の認識の溝は大きい」と述べ、政府による改革の進行が「あまりに僅かであまりに遅すぎる」と批判した。

(日本の女性は、社会進出する上で男性に比べて選択肢が限られていることを報じる記事。海外メディアの多くは、日本政府が掲げる女性の社会進出策と、実際の日本の状況に大きな乖離があることに疑問を呈している。
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3)女性の活躍、政策だけでは達成不可… 課題は長時間労働、“女は家庭”価値観との声

 アメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所のサイトに寄稿したNHKの解説委員、道傳愛子氏は、政策や規制によってだけでは、女性の労働参加は進まないと述べ、大切なのは伝統的な労働倫理や考え方を見直すことだと指摘する。

 道傳氏は、憂慮すべき例として、女の居場所は家庭、女性はすぐにやめるという考え方が、女性のモチベーションと機会を奪い、その結果、職場に定着しないか、低賃金の職に縛られてしまうため、ますます雇用者が女性の出世に投資をしないという悪循環を挙げている。また、性別にかかわらず、長時間労働や半強制的な飲み会、社員旅行も減らすべきで、職場で費やす時間より、生産性のほうが重要だと指摘する。

(同氏は性別に関係なく、より開かれた、異なる意見や信念を受け入れる社会を目指すべきで、意思決定者、同僚、家族として、男性も協力して、女性の労働参加を増やすべきだとする。そして、少子高齢化のなか、もはや選択の問題ではなく、時間の問題であると、記事を締めくくっている。)
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4)日本の「マタハラ」、ウーマノミクスを妨害? 在日外国人も被害、海外メディア注目

 安倍政権は、自身の経済成長戦略「アベノミクス」の柱の1つとして、「女性の活躍推進」を掲げている。しかしながら、それに立ちふさがるのが、妊娠や子育てにまつわるハラスメント「マタニティ・ハラスメント」(略して「マタハラ」)の問題だと海外メディアが伝える。

 ロイターの記事によれば、1990年代後半からの不景気により単一の収入源による家計の維持が難しくなり、女性が出産後も仕事を続けるケースが増えたが、それと同時に、妊娠や子育てに対するハラスメントや差別に関する苦情も増えている。

 被害に遭っているのは日本人ばかりではない。在日外国人のマタハラのケースをジャパン・タイムスが報道している。

(安倍政権の女性の活躍を後押しする政策を紹介しつつも、厳しい労働環境のためにマタハラが起きていると伝える、ディプロマットの記事では、この問題の解決が女性の役割だけでなく、ワーク・ライフ・バランスに対する人々の考え方を変化させるだろう、と提案している。)
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5)「ウーマノミクス」提唱者、安倍首相を評価 期待の理由とは

 安倍首相は正しいことをしていると、ウーマノミクスの立役者であるキャシー松井氏は語っている。同氏は「歴代首相でこの問題にここまで取り組んだ人はいない」と安倍首相を評価する。

 ワールド・ファイナンスによると、安倍首相は今後10年でGDP2%増加を目標に掲げており、それは女性の労働力なくして有り得ない、と考えているとのことだ。高齢化と出生率の低下により労働力が減少していく中、女性の活用は急務であり、2020年までに女性の労働人口を現在の68%から73%にする計画とのことである。

(日本における女性の社会的地位向上への戦いは長く険しいものだった。1985年にようやく制定された男女雇用機会均等法も、結局は形だけと揶揄され続け、今日に至る。待ったなしの事態と見られる今度こそは、見せかけだけの平等から本当に抜け出せるのか。)
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Text by NewSphere 編集部