「ウーマノミクス」提唱者、安倍首相を評価 期待の理由とは

 安倍首相が日本の成長戦略として打ち出している「ウーマノミクス」。依然、女性の社会的地位が先進国最低レベルといわれている日本で、果たして経済成長のカギとなり得るのか。

【日本は女性が女性が働きにくい国】
 2013年に発表された世界男女格差レポートににおいて、日本は136ヶ国中105位という結果であった。トップの北欧勢、23位のアメリカ、69位の中国と比べ極めて低い。

 AP通信は、この状況を、日本において女性は雇用、昇進、賃金あらゆる面において差別を受けていると伝える。女性は同等の労働に対し男性の70%しか報酬を得られず、女性が管理職に占める割合はわずか12%とのことだ。役員にいたってはたったの3.9%である。ちなみにアメリカは12%、フランスは18%だ。

「ほとんどの大企業は女性の活用に積極的でない」と人材サービスのパソナグループ役員、深澤旬子氏は語る。自身も、男性部下が上司と勘違いされたり、自分が責任者であることをわざわざ申し出なければならないなど女性であるがゆえの偏見を経験してきた。

 壁が存在するのは職場だけではない。大塚製薬役員の鳥取桂氏は「もっとも重要かつ困難なのは、家事育児は女性がやるものという家庭観を変えること」と語る。日本で「主婦」の概念は根強く、女性自身の労働意欲を削ぐ原因にもなっている、とのことだ。政治家や財界人に保守的な考えの持ち主が多く、彼らが女性を出生率を上げるための道具に過ぎないと思っていることも安倍首相にとって悩みの種、とワールド・ファイナンスは指摘する。

【”形だけの平等” からの脱出なるか】
「それでも安倍首相は正しいことをしている。道は厳しいけれど、他にどんな選択肢があるというの?」

 ウーマノミクスの立役者であるキャシー松井氏(48)はそう語る。ゴールドマン・サックスのアナリストであり、2児の母でもある彼女は、カリフォルニアで育ち24年前に来日。その後日本でキャリアを築いている。

 ブルームバーグ・ニュースは松井氏を「女性の社会活用に向けて安倍首相を動かした」存在として大きく紹介した。そもそもウーマノミクスは、1999年に松井氏が発表した「日本のGDPは女性の活用で15%上がる」という分析に端を発する。あれから14年、ようやく政府が動き出したというわけだ。松井氏は「歴代首相でこの問題にここまで取り組んだ人はいない」と安倍首相を評価する。

 ワールド・ファイナンスによると、安倍首相は今後10年でGDP2%増加を目標に掲げており、それは女性の労働力なくして有り得ない、と考えているとのことだ。高齢化と出生率の低下により労働力が減少していく中、女性の活用は急務であり、2020年までに女性の労働人口を現在の68%から73%にする計画とのことである。

 日本における女性の社会的地位向上への戦いは長く険しいものだった。1985年にようやく制定された男女雇用機会均等法も、結局は形だけと揶揄され続け、今日に至る。待ったなしの事態と見られる今度こそは、見せかけだけの平等から本当に抜け出せるのか。

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲(シェリル・サンドバーグ)

Text by NewSphere 編集部