女性の活躍、政策だけでは達成不可… 課題は長時間労働、“女は家庭”価値観との声

 17日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」が閣議決定された。女性の雇用や管理職への登用などに関する数値目標と、その達成に向けた計画の発表を、国や自治体、企業に義務づける法案だ。政府は少子高齢化による労働力不足を、女性の力を活用することで解決を目指している。

◆制度には問題点も
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、この法案は、従業員301人以上の企業に、雇用者全体や管理職全体に占める女性の割合など、ターゲットを選択させ、それを達成するための計画の公表を義務付けるものだという。

 2020年までに女性の指導的地位に占める割合を30%にと言う安倍政権だが、WSJは、法案はどのような目標を企業が設定すべきかという点であいまいだとする。さらに、数値目標の効果や、公平性においての議論はほとんど解決しておらず、応じない企業への罰則もないと述べ、制度の問題点を指摘している。

◆政策評価も、出遅れも指摘
 イギリスのブレア元首相夫人で弁護士でもあるチェリー・ブレア氏は、東京で開催された「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」に出席。その後、ガーディアン紙に寄せた記事で、日本経済をアップデートするため、最も十分に活用されていない資源、つまり女性に権限を与え、その労働参加率を高めるという安倍首相の政策を評価している。

 ブレア氏は、女性の労働力市場への参加が男性並みになれば、縮小する日本の労働市場に710万人が加わることになり、GDPを13%増加させる可能性を持つと述べる。しかし欧米では、主婦から事務職に就き、最終的にはトップエグゼクティブまで上り詰めるような、活発な女性の労働参加が1960年代から行われているとし、日本の出遅れを指摘している。

◆多様性で流れを変える
 アメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所のサイトに寄稿したNHKの解説委員、道傳愛子氏は、政策や規制によってだけでは、女性の労働参加は進まないと述べ、大切なのは伝統的な労働倫理や考え方を見直すことだと指摘する。

 道傳氏は、憂慮すべき例として、女の居場所は家庭、女性はすぐにやめるという考え方が、女性のモチベーションと機会を奪い、その結果、職場に定着しないか、低賃金の職に縛られてしまうため、ますます雇用者が女性の出世に投資をしないという悪循環を挙げている。また、性別にかかわらず、長時間労働や半強制的な飲み会、社員旅行も減らすべきで、職場で費やす時間より、生産性のほうが重要だと指摘する。

 女性の進出が、日本社会を変える引き金になると言う道傳氏は、多様性を、既存の流れを変えるゲームチェンジャーにすべきだとし、ゲームのルールを変えるのだという集団的意志なくして、現状は変わらないと述べる。

 同氏は性別に関係なく、より開かれた、異なる意見や信念を受け入れる社会を目指すべきで、意思決定者、同僚、家族として、男性も協力して、女性の労働参加を増やすべきだとする。そして、少子高齢化のなか、もはや選択の問題ではなく、時間の問題であると、記事を締めくくっている。

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Text by NewSphere 編集部