バイデン氏の人気が低迷している理由 24年大統領選の不安材料

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◆問題にされるバイデン氏の年齢
 バイデン氏に関して最も大きな問題とされているのは年齢だ。バイデン氏は現在80歳で今年11月には81歳になり、次回大統領選が実施される2024年11月には82歳の誕生日を迎える高齢であるため、2025年からの4年間、大統領職を健康なままで全うできるかに疑問が生まれるのも無理はないだろう。しかし一方のトランプ氏も今年77歳で、年齢的にはそれほど違いはない。

 ここでの問題は、バイデン氏が現在身体的・精神的に健康であるにもかかわらず、たまたまつまずいて転んだり、言い間違いをしたりしたことが頻繁にニュースでクローズアップされることだ。これらは毎日起こっていることではなく、もちろん誰だってつまずいて転ぶことはあるし言い間違いもする。しかしバイデン氏がたまにそれをすると「年を取りすぎている」と問題視されるのだ。

 バイデン氏は頻繁に各地のイベントでスピーチをこなし、外遊し、テレビでインタビューを受け、選挙キャンペーンのイベントにも積極的に参加している。ちなみに民主党のナンシー・ペロシ前下院議長はバイデン氏より年上の83歳だが、ペロシ氏の年齢は問題になっていない。バイデン氏の年齢が高いことは事実だが、常に行動を監視され、転んだり間違ったりしたときだけあげつらわれるのは高齢者差別以外の何物でもないが、実際にバイデン氏の年齢は共和党だけでなく民主党支持者にとっても懸念要素である。ここでハリス副大統領の不人気さが問題になってくるのは、バイデン大統領が大統領職を続けられない場合は自動的にハリス大統領が誕生、というシナリオが存在するためである。

◆共和党が執着するバイデン氏次男
 年齢に加えてバイデン氏のネックになっているのは、次男のハンター・バイデン氏だ。ハンター氏は確かにこれまで素行が良いとは言えない行動をしてきた傾向があり、結婚・離婚を繰り返したり、違法薬物中毒を告白したり、また最近では以前関係を持ったストリッパーとの間に生まれた子供についてDNA鑑定を受けさせられ莫大な養育費を請求されたりと、何かとニュースに事欠かない人物といえる。しかしハンター氏はあくまで一般人で、これらはすべて彼がバイデン氏の息子であるだけでクローズアップされていることだ。共和党員はバイデン大統領自身を攻撃する材料があまりないためか、一般人であるハンター氏の捜査に執着しているのである。

 共和党はまた私生活だけでなく、ハンター氏のビジネス関係においても追及を強めている。それに対し、ハンター氏の弁護団は、ハンター氏は民間人で議会は同氏を追及するべきではないと主張している。その一方で共和党は、トランプ氏の娘婿ということで大統領上級顧問に就き、退任後、自身の会社にサウジアラビアから巨額の投資を受けたジャレッド・クシュナー氏や、娘ということで大統領補佐官になり、自分自身のブランドを宣伝したり、中国からビジネスの優遇措置を受けていたイバンカ氏については完全にだんまりを決め込んでいる。

 バイデン氏の支持率が低いことは必ずしもトランプ氏有利にはつながらないが、不安材料となることは確かだ。2024年大統領選に向けて、バイデン政権は今後、これまでの成果や実績をもっと目に見える形で上手くアピールしつつ、ハリス副大統領をもっと多くメディアに登場させて存在感を大きくし、アメリカ人有権者の不安を払拭する必要があるだろう。 

Text by 川島 実佳