トランプ氏はなぜ機密文書を返さなかったのか 元側近が語る意外な理由

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◆欲しいものを集めて返さない習性
 バイデン政権の前報道官を務め、後にNBC系ニュース専門局MSNBCに転職したジェン・サキ氏が司会を務める報道番組『インサイド・ウィズ・ジェン・サキ』に出演したジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「彼は自分が興味を持ったものは、それが(新聞などの)切り抜きでも、記念品でも、または機密文書でも集めたがるコレクターだ」と話し、ボルトン氏在任時にも、トランプ氏が渡された機密文書を返さないことが頻繁にあったと述べた。ボルトン氏は「我々はできるだけ機密文書をトランプ氏から回収するよう努めたが、失敗することもあった」と話し、回収の失敗が問題になったのが「トランプ氏在任中にイランのロケット発射失敗の航空写真をツイートしてしまった時だ」と語った。

 件のツイート事件が起こった2019年当時の報道によると、その写真は当時、トランプ氏へのブリーフィングで同氏に見せられたものだったという。それがどのようにしてツイッターに投稿されることになったのかは明らかではないとされるが、おそらくボルトン氏が言うように、ブリーフィングの最中にトランプ氏が持ち出し、返さなかったものの一つである可能性が高い。トランプ氏はこのようにして機密文書をため、2021年1月20日の退任時に持ち出したのだと思われる。

◆「子供のように」くだらないことのために戦う
 ここまでトランプ氏が機密文書に固執する理由は何だろうか? トランプ氏の専属弁護士として長年同氏の「フィクサー」を務めたマイケル・コーエン氏は、トランプ氏の起訴について「文書を持っていることがバレた後、彼(トランプ氏)はただ返還すればよかったのだ。その代わりに、またもや短気な子供のように、ただそれを持ち続け、戦って戦いまくろうとする。彼はくだらないことのために戦うだろう」とCNNの番組で述べた。

 つまりトランプ氏が機密文書を手放さなかったのは、大統領選で敗北したことを認めず何度も裁判をして法的に争ったりしたことと同じで、「自分のものを誰かに渡したくない」という心理があり、これらの文書に囲まれていることで「自分はまだ大統領で、最も大事な存在なのだ」と思いたかったからなのかもしれない。

Text by 川島 実佳