「レッドウェーブ」なぜ不発? 世論調査とメディアが作った中間選挙の虚構

ホワイトハウスで会見するバイデン大統領(11月9日)|Susan Walsh / AP Photo

 11月8日、アメリカで中間選挙が行われた。今回の選挙前には共和党議員やアメリカ国内のメディア、特にFOXなど保守派メディアがこぞって「レッドウェーブが来る」と騒いで盛り上がった。トランプ前大統領も勝利を見越して選挙後の15日に2024年の大統領選への出馬を表明すると噂されていた。

 しかし11月12日に民主党が上院で50議席目を獲得して多数派保持が決定。下院では共和党が数議席リードしているものの予想外の接戦となった。共和党があれだけ期待したレッドウェーブは不発に終わり、現在はそれが「レッドスプラッシュ」「レッドパドル(水たまり)」などと呼ばれている。

◆世論調査に作られた偽レッドウェーブ
 ではあれだけ騒がれていた「レッドウェーブ」はなぜ不発に終わったのだろうか? 実はその根拠のなさを示すサインは至るところに見られた。まず一つ目は、中間選挙の2ヶ月ほど前から急に世論調査での共和党の支持率が上がり始めたことである。これは必ずしも共和党候補の支持率が上がったわけではなく、実はトラファルガーやラスムセンなど、保守系の世論調査会社が毎日のように世論調査を行って結果を提出することで平均支持率を上げたためだった。

 リアル・クリア・ポリティクスファイブサーティエイトなど統計系サイトを見ると、これら保守系世論調査では中立的な世論調査よりも共和党候補者の支持率が3~5%程度高い結果が出ていることがわかる。統計サイトではすべての調査の平均を計算して公表しているため、保守派調査会社の調査結果が増えると共和党の支持率が上がって見えるのだ。そのような調査結果を真に受けて盛り上がったのが今回の「レッドウェーブ」だろう。この問題は選挙前にもMSNBCや一部のリベラル系独立メディアでも取り沙汰されていた。今回の騒ぎは、歴史的にそうだったように政権与党が大敗するはずという先入観や、これら保守派の世論調査の結果に踊らされたものと言えるだろう。

Text by 川島 実佳