弁護士を雇うトランプ氏の弁護士たち 「MAGA」が新しい意味を帯びる

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 ドナルド・トランプ前大統領が2016年大統領選の選挙運動中から使っていたスローガン「MAGA(Make America Great Again)」は一時一世を風靡したが、いまではトランプ氏支持者全体や、トランプ氏に代表されるファシズム思想を指す言葉になってしまっている。

 脱税や司法妨害、クーデター未遂(1月6日議会襲撃事件)、選挙法違反、機密文書の違法所持・隠匿など、トランプ氏を取り巻く数々の疑惑が明らかになるにつれ、その「MAGA」が新しい意味を持つようになった。それは「Making Attorneys Get Attorneys」で「弁護士に弁護士を雇わせる」という意味だ。トランプ氏の弁護を受け持ってきた弁護士たちが次々にトランプ氏の不正疑惑に巻き込まれて、自分たち自身の弁護士を雇う必要に迫られていることを意味している。

◆トランプ氏「フィクサー」は弁護士資格はく奪
 その1人目は長年同氏の専属弁護士としてトランプ氏が起こす数々の揉め事を始末して「フィクサー」と呼ばれたマイケル・コーエン氏で、トランプ氏の罪を被るような形で有罪判決を受けた。アメリカ司法省によると、同氏はトランプ氏の選挙運動中、「大統領選の結果に影響を及ぼすため、女性に15万ドルを支払った」として逮捕された。コーエン氏はその後選挙資金法違反や詐欺の罪状で2018年に禁固3年の有罪判決を受けて服役し、弁護士資格をはく奪された。いわば口止め料として支払いを受けた「女性」というのは、トランプ氏が不倫関係を持ったポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏である。

 コーエン氏はトランプ氏の弁護士であり、トランプ氏の指示なく違法な支払いをするのは考えにくいが、2018年当時はトランプ氏が大統領在任中で、ウィリアム・バー氏が司法長官を務めており、トランプ氏自身の責任はうやむやになった。

 その後コーエン氏はトランプ氏と決別し、現在はMSNBCやCNNなどさまざまなニュース番組に出演してトランプ氏に関する真実を暴いているほか、著作も出版して活躍している。

Text by 川島 実佳