エネルギー・気候変動対策に50兆円 米上院、「インフレ抑制法案」可決
◆エネルギー・気候変動対策への投資強化へ
インフレ抑制法案の概要では、3000億ドル(約40兆円)以上を財政赤字の削減に当てることでインフレを抑制すると銘打たれているが、本法案のハイライトは歳出予算案の85%を占める3690億ドル(約50兆円)のエネルギー・気候変動対策に対する投資だと言える。投資によってエネルギーコストを下げ、よりクリーンな製造を進め、2030年までに炭素排出量を約40%削減する。具体的には、家庭用品の電化もしくはよりエネルギー効率の高いものへの買い替えのための低所得者層への総額90億ドル(約1.2兆円)のリベート。ほかにも、中低所得者に対しての中古のクリーンエネルギー自動車購入に対する最大4000ドル(約54万円)の税額控除と、新車購入に対する最大7500ドル(約101万円)の税額控除が組み込まれた。また、ソーラーパネルや風力発電タービンのメーカーや、電気自動車メーカーに対する減税や補助も計画されている。
投資予算を確保するための歳入計画の柱の一つが、大企業へ最低税率15%を課すもので、3130億ドル(約42兆円)の歳入予算が計画されている。現行の連邦法人税は21%だが、200社以上の大企業が税の抜け穴を利用してこの税率の支払いを回避している。本案は、10億ドル(約1350億円)を超える利益のある企業に対して、調整後の財務諸表上の所得に対して15%の最低税率を課すというもので、2022年12月31日以降に開始する課税年度から適用される予定だ。
ほかにも処方箋薬の価格改革で2880億ドル(約39兆円)の歳入を見込んでいる。具体的には、メディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)に一部の処方薬の価格交渉権を初めて付与することや、メディケアに販売された医薬品の価格上昇率がインフレ率を超えた場合、その製造業者に罰則を課すこと、メディケア受給者の自己負担薬の費用を年間 2000 ドル(約27万円)に制限することが盛り込まれている。
インフレ抑制法案はアメリカの家庭に寄り添うもので、気候変動に取り組むための過去最大の投資となるとバイデン大統領は声明を発表した。今年11月に中間選挙を控えている米国。気候変動対策が政治的なカードに留まらず、長期的なコミットメントとなることが期待される。
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