トランプ派の郵便公社総裁を罷免へ バイデン大統領の「追放シナリオ」

ルイス・デジョイ郵便公社総裁|Jim Watson / Pool via AP

◆新理事指名で「デジョイ追放」へ王手
 しかし、2022年の中間選挙まで1年を切り、郵便投票のあり方が問題になっているいま、バイデン大統領がこのままおとなしく引き下がるわけはない。バイデン大統領は、裏でデジョイ氏を退任させるための策を練り、密かにコツコツと駒を進めていたようである。

 理事会には現在、トランプ氏が指名したデジョイ氏寄りの理事が9人のうち6人残っている。バイデン大統領は今年5月、前理事の任期切れを受け、3人の新理事を新たに指名した。現在はまだデジョイ派が優勢であるものの、年末に新たに2人のトランプ派理事の任期が切れることを受け、バイデン大統領は新理事2人の指名を行う予定だ。

 ワシントンポスト(電子版)によると、任期切れする理事のうちの一人のロン・ブルーム理事長は民主党員だが、どのような経緯からかトランプ前大統領に指名されていた。バイデン大統領は19日、このブルーム理事長を含む2人と替わる理事を指名することを公表。上院で承認されれば、理事会の政治的バランスがバイデン側に傾く結果となる。これはもちろん偶然ではなく、バイデン大統領の「デジョイ追放のシナリオ」であることは間違いないだろう。
 
 同記事によると、ジェン・サキ報道官は、ホワイトハウスがデジョイ氏の利益相反に「ほかのアメリカ人と同様に深く憂慮している」「(郵便公社の)リーダーシップについて決断をするのは理事会次第だが、我々は総裁のリーダーシップに深い懸念を持ち続けている」と話し、バイデン大統領の意思がデジョイ氏追放に向かっていることを示した。

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Text by 川島 実佳