「集団免疫」戦略は最も重大な失敗 英政府コロナ初期対応、下院が検証

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◆専門家には逆らえなかった 危険な集団思考
 報告書では、初期段階の誤りの理由として、①ウイルスの拡散に関するデータが不十分だったこと、②特定の数理モデルに過度に依存したこと、③ロックダウンを遵守しようとする市民の意志を過小評価したこと、④政府の非常時科学諮問委員会(Sage)のメンバーと活動内容を秘密にしたこと、⑤イギリス中心に偏り、他国から学べる対応を排除したこと、などが挙げられている。(FT)

 エジンバラ大学のグローバル公衆衛生の専門家、デビ・シュリダール教授は、⑤をとくに問題視。政府の政策選択により、東アジアの国々が行ったような大規模検査と追跡、大規模な集まりの禁止、マスク着用、空港での入国者スクリーニング、不要不急の旅行の中止などの措置は、当初イギリスでは無視されていたと述べる。同氏は、ワクチンができるまで感染を避けて時間を稼がなくてはならないと政府の上級顧問に訴えたという。しかし大臣や政府顧問の間には、感染の波を止めるためにできることはなく、問題を無視すればそのうち解決するだろうという諦めがあり、感染を防ぐため最大限の努力をする国々とは対照的な態度だったとしている。(ガーディアン紙

 報告書では、政府がロックダウンに消極的だったのは専門家の助言に従ったためで、政策はすべての重要な点において科学的助言から逸脱していないと述べている。実はSageの会議の参加者は、一人を除いて全員がイギリスの機関に属していたという指摘がある。一定の集団思考のせいで、本来なら受け入れるべきだった他国で行われているアプローチを認めることができなかった可能性もある。報告書はまた、閣僚たちは科学顧問の見解に異議を唱えるのは難しいと考えていたと説明。しかし緊急事態においては、助言の背後にある仮定を疑うべきであったとしている。(FT)

◆ワクチンに救われた 今後の対応に注目
 初期の対応は失敗であったが、ワクチンの開発、接種展開のための努力を報告書は高く評価し、今後の政府の取り組みの指針となるべきものだとしている。結論として、政府の対応がもたらした良い結果と悪い結果の両方が今後に反映されるべきだとしている。(FT)

 ワクチン接種で感染を抑え、経済を再開させたイギリスだが、このところまた感染者数が増え1日4万人を超えている。死者や重症者の急増にはつながっていないが、冬を前に懸念が広がっており、政府の適切な対応が望まれる。

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Text by 山川 真智子