「集団免疫」戦略は最も重大な失敗 英政府コロナ初期対応、下院が検証

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 イギリス下院の科学技術委員会と保健社会福祉委員会の共同報告書は、イギリスの新型コロナウイルスによるパンデミックへの初期対応は、同国がこれまでに経験した最も重大な公衆衛生上の失敗の一つとだという見解を示した。パンデミックへの備えは事前には高く評価されていたのに、「集団免疫」を目指すなど致命的な選択をしており、多くの犠牲者を出すことにつながったと指摘されている。

◆集団免疫目指した? 結果的に感染拡大
 イギリスの新型コロナ感染による死者数は約14万人で、世界でも最も多くの犠牲者を出した国の一つに数えられている。報告書は、イギリスは「世界有数の専門知識」を持っているにもかかわらず、パンデミックの初期の数週間に、ロックダウンやソーシャルディスタンスなどの措置を遅らせる決定をしたと述べている。(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)

 イギリスの初期のアプローチは、正式に発表こそされなかったが「集団免疫」達成のためと広く見られていた。集団の高い免疫力は、自然感染とワクチン接種の両方により獲得される。ワクチンのない段階で集団免疫を獲得するために、イギリスやスウェーデンなどは、ある程度ウイルスが集団のなかに広がることを選んだようだ。

 しかしこの戦略により、イギリスでは感染者が急増。高齢者を中心に多くの死者が出て、医療も圧迫され、政府は昨年3月26日に全国規模の封鎖措置を取った。報告書は50人以上の専門家から証言を得ており、初期の政府の対応が誤った集団免疫の追求になってしまったと酷評している。その一方で、当時はワクチンもなく検査能力も限られ、長期間の封鎖を国民が受け入れないという見方が広まっていたと説明。感染による集団免疫が、実際のところ必然的な結果だと認めることにつながったとも述べている。(CNBC

Text by 山川 真智子