感染増のなか規制解除へ向かうイギリス 専門家から反対の声

Daniel Leal-Olivas / Pool Photo via AP

◆実験かギャンブルか? 専門家は批判
 ところが19日の規制解除に、「政府は危険で非倫理的な実験に着手している」として、専門家たちが反対する書簡を医学雑誌ランセットに発表した。理由として以下の5つを上げている。

① すでに感染して免疫を持つ人を差し引いても、現在のワクチン接種状況では1700万人以上がウイルスに対して保護されていない。将来的に慢性的な健康問題や障害を抱える世代が生まれる可能性がある。
② 子供の間で高い感染率が続けば教育に大きな支障をきたす。最終的に子供たちが安全に学校に通うにはワクチン接種が必要だ。
③ 感染拡大を許容すれば、ワクチン耐性を持つ変異株を作り出す可能性もある。イギリスだけでなく世界を危険にさらすことになる。
④ 感染者数の増加は入院患者の増加につながり、医療サービスや医療従事者の負担を増大させる。
⑤ 貧困層などは感染するリスクが高く、弱者へのリスクの高まりが不平等を深める。

 専門家たちは、このようなリスクを考慮すると、高レベルの感染を容認する戦略は非倫理的かつ非論理的だとし、政府は現在の戦略を再考し、子供を含む国民を守るための対策を早急に講じなければならないとしている。CNNによれば、この書簡には多くの科学者、医療従事者などが賛同しており、4200人以上の署名が集まっている。

◆トーンダウンも 自由の日は来るか?
 ジョンソン首相は、当初7月19日は「自由の日」であり、すべての規制を撤廃すると述べていた。しかし、多くの批判や反対意見を考慮したのか、現在では電車など混んだ場所では引き続きマスクをつけるべきだという考えを示している。

 政府は研究機関からの最新の感染モデルを7月12日に提示することになっている。規制解除の最終判断は、この日に下されると見られている。

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Text by 山川 真智子