増えた黒人男性のトランプ支持 根底に「強い男」崇拝?

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◆トランプ氏を「強い男」と崇める人々 
 ごく一部の人口であるといえど、黒人女性よりも黒人男性がトランプ氏に惹かれる理由とは何だろうか? LAタイムズは意見欄で、トランプ氏を「男のなかの男」と呼ぶバーノン・ジョーンズ氏のような黒人男性が同氏に惹かれる理由は、負けを認めなかったり、周りを脅してでも自分の我を通したりする「毒のある男らしさ」であると述べている。また、自称ではあるがトランプ氏の「ビリオネア」としてのステータスに惹かれる人も多いだろう。トランプ氏は「マッチョ」、すなわち「強い男」でいたい男性たちの憧れなのかもしれない。

 NBCニュースによると、2008年の大統領選では、黒人男性のオバマ大統領への投票率は95%だったという。それが2016年のヒラリー・クリントン元国務長官の際には82%に減少し、今回バイデン氏への投票率はさらに落ちて80%だった。また同記事によると、黒人男性のトランプ氏支持率は学歴の高さと反比例しており、高卒の場合は26%、大卒の場合22%、それより高学歴の場合は20%だという。

 人格の良さや思いやり、家族や支持者との温かいつながりや愛を選挙の争点として当選したバイデン氏は「マッチョ」な男性ではないが、過去4年間の分断により壊れかけた「アメリカの精神」を癒してくれる人物として、過半数の支持を受けて当選した。しかし、思想が分断されたアメリカで、「支配」に重点を置く毒のある男性像を崇拝する人々が存在する限り、今後もそんな人々のアイドルとしてトランプ氏が君臨し続ける可能性は否定できない。

Text by 川島 実佳