「大統領選の前に」トランプ氏、コロナワクチン接種開始を急ぐ

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◆「ドナルド・トランプは信じない」
 ではトランプ氏の主張を人々はどう受け取っているのだろうか。筆者に関して言えば、ワクチン接種を受けたいのはやまやまだが、信頼できる検査を経て、安全性が確立されたものでなければ受けないほうがましだと考えている。その考えは民主党候補のジョー・バイデン前副大統領も同じだったようだ。

 ABCニュース(電子版)によると、バイデン氏は9月、「私はワクチンを信じるし、科学者を信じる。しかし、ドナルド・トランプは信じない。この時点では、アメリカ国民も(トランプ氏を)信じられない」ときっぱり言い放った。また、副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員も、今月7日に行われたマイク・ペンス副大統領との討論会で同じことを述べた。

 トランプ氏はどうしても大統領選前にワクチン供給を開始したいようだが、CNNによると、FDAはワクチン供給を承認する前に、薬品会社に対し2ヶ月間の安全性データ収集を要求している。その要求に対してトランプ氏はツイッターで、「FDAの新しいルールは、ワクチン接種の開始をスピードアップして大統領選前に実施することを難しくしている。これは政治的な暗殺行為だ!」と発言。あくまでワクチンを自分自身の再選のツールとしてしか考えていないことをうかがわせた。

 10月初旬現在、アメリカではまだワクチン接種に関する具体的な話は挙がっておらず、大統領選が実施される11月3日までの今後3週間以内に接種を開始することはまず無理だ。元々、ワクチンを政治目的にすること自体が間違っており、安全でないワクチンを無理矢理接種するような事態はあってはならないのである。

Text by 川島 実佳