感染対策うまくいっているのに、なぜ安倍政権の評価は低いのか?

出典:首相官邸ホームページ

◆日本だけ感染にずれ? 国民の不安払しょくできず
 安倍首相の不人気を不思議に思ったのが、トロント大学の政治学者フィリップ・リプシー氏だ。安倍首相の支持率は低迷しているのに、コロナ対策の結果がとてもよく見えるのは「日本のコロナの謎」だとツイッターで述べている。

 同氏は、日本のコロナ対策は早期に始まり、ほかのOECD諸国と比べて流行のサイクルがずれていたと指摘する。他国で死亡者が急増していた時期にすでに日本では自粛による疲れが出始めており、3月下旬、欧米が深刻なロックダウンに突入するころ、日本では気の緩みが出て早々に普通の生活に戻ろうとしているという話が出ていた。ところが感染が国際的に広がり、日本にも次の波がやってくる。各国の感染速度が低下するなか、日本では逆に感染が増え始め、このタイミングで日本の対応が役に立たないかのように見えてしまった。引用されることの多いフィナンシャル・タイムズ紙のグラフも、人口規模が調整されない対数目盛が使われており、日本の問題が誇張されてしまったとしている。

 同氏は、安倍政権は確かに重大なミスも犯し公報メッセージの出し方にも苦労していたが、日本の対応に対する認識と結果のギャップは、不当に大きいと述べている。もっとも、もし安倍首相が大量検査を推進し素早く緊急事態宣言をしていれば状況は違っていたかもしれないとする。そういったことが科学的に正しいかどうかは議論の余地があるが、透明性と決断力のなさも低評価につながったと見ている。

◆国民は将来を心配 足りなかった経済対策
 一方、早稲田大学現代政治経済研究所の研究助手、ロバート・ファーヒ氏は、リプシー氏が言う評価が低いという「謎」は、安倍首相の感染症対策とは直接関係していないとツイートしている。同氏は、国民にとって感染症対策は医師や専門家の仕事で、首相の仕事は国民の収入と安定を守ることだったと指摘。経済面での期待をしていたのに、自粛で被害を受けた人々の生活や企業を守るには対策不十分で、死者を抑えても褒められなかったと見ている。

 戦略的PRコンサルティング会社、ケクストCNCが日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデンの各1000人を対象に行った新型コロナに関する調査でも、同様の理由が示されている。調査によると、日本人の60%は感染拡大の防止を優先すべきと回答。しかし、ビジネスの状況と経済状況への不安がそれぞれ68%、74%となり、アメリカに次いで高い結果となった。

 感染拡大以上に経済的な影響を心配する人の割合が他国より目立っており、自分の会社の倒産や失業を心配する人も他国より多かった。家計への影響が2021年以降も続くだろうと回答した日本人は2位のイギリスの34%を大きく上回り56%で、自分の生活に長期的な影響が出ると考えている人は他国の34~41%に対し、日本では50%と高かった。

 政府の対応能力やビジネス支援に対しても日本では著しく信頼感が低下しており、信頼が高まったとするドイツやスウェーデンとは対照的な結果となった。さらに、「コロナを機会に経済の在り方を根本的に変えるべき」と答えた日本人は58%で、5ヶ国中最も高くなった。日本人がコロナ後の変化を強く望む裏には、コロナ以前の経済政策への強い不満もありそうだ。今後も安倍政権には厳しい目が向けられると思われる。

Text by 山川 真智子

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