「ロシアの手先」マコネル上院院内総務への風当たり強まる

Timothy D. Easley / AP Photo

◆選挙改正法をブロック、あだ名が「モスクワ・ミッチ」に
 マコネル氏が民主党に嫌われる最たる理由として、同氏が上院院内総務の地位を利用し、民主党が過半数を占める米下院を通過した数々の法案を上院でストップしていることが挙げられる。CNN(電子版)によると、マコネル氏がこれまで上院でブロックした法案のなかには最低賃金の引き上げや銃規制、ヘルスケアの拡大に関するものなどいくつかある。なかでも、民主党がもっとも同氏の意図をいぶかしんでいるのは、外国による米国選挙介入を阻止する選挙改革法案を上院で審議することをマコネル氏が拒否したという事実だ。

 2016年の米大統領選でロシアが選挙介入を行ったことはアメリカの全情報機関が認めている。しかし、マコネル氏が下院を通過したこの法案の投票を上院で阻止したことから、同氏は「ロシアの手先ではないのか」と民主党側に揶揄された。そこで同議長につけられたあだ名が「モスクワ・ミッチ(Moscow Mitch)」である。

 CNNの記事によると、14日には下院のナンシー・ペロシ下院議長もこのあだ名を使い、「われわれは(下院を通過した)法案を上院に送った。モスクワ・ミッチは自分が『死神だ』と言っている。自分自身を死神と呼ぶことを想像して欲しい。彼は(下院から上院に送られた)数々の法案を埋めてしまうつもりなのだ」と述べた。
 
 また民主党ばかりか、トランプ大統領の政策に反対する共和党団体までもがマコネル氏を攻撃し始めている。『ハフポスト』によると、この団体は「リパブリカンズ・フォー・ザ・ルール・オブ・ロー(Republicans for the Rule of Law)」で、マコネル氏の地元ケンタッキー州でテレビ広告を出し、同氏がストップしている法案の審議を要求した。報道によると、テレビ広告は「ミッチ・マコネルにあなたの邪魔をさせるな」という言葉で締めくくられているという。

 そんなマコネル氏は今年77歳になったが、2020年に再選をかけてケンタッキー州で上院選に出馬する予定だ。しかし、情報サイト『Vox』によると、マコネル氏への風当たりが強くなっていることに目をつけたためか、元海兵隊のエイミー・マグラス氏が、民主党から同州上院選に出馬し、マコネル氏に立ち向かうことを表明。保守色が強い南部ケンタッキー州で、もっともパワフルな上院議員と呼ばれるマコネル氏を新人のマグラス氏が打ち負かすことができるかどうかに注目が集まっている。

Text by 川島 実佳