英、離脱延期で欧州議会選挙へ 新党も登場、ますます複雑化

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◆もはや形を変えた国民投票? 政府への不満が募る
 不毛な選挙のように思えるが、選挙をボイコットする動きはなさそうだ。イギリスの有権者は欧州議会選挙を、EU離脱とEUでのイギリスの未来についての代理国民投票と見なしているからだ(BBC)。

 もっとも有権者は少なからずフラストレーションを感じている。離脱を問う国民投票では保守党支持者の70%が離脱に投票した。しかし保守党は、過去2年間で離脱をなし遂げるという任務を果たせず、約束破りの連続で有権者の信頼を失い、議会と有権者の溝を深めてしまった。

 調査会社ユーガブのクリス・カーティス氏によれば、2017年の総選挙で保守党を支持した有権者のうち、実に84%が政府のブレグジットの方向性に不満だと回答している。また、保守党を支持した有権者のなかで、メイ首相の離脱協定案より合意なき離脱のほうがましと答え人が、メイ首相案を支持する人の2倍以上となっている(ガーディアン紙)。

                                                                                                                 

◆ファラージ氏再浮上 離脱派の支持を集めるか?
 政府への不信感が募ったところに現れたのが、2014年の欧州議会選挙で党首としてUKIPに勝利をもたらしたファラージ氏だ。ブレグジット党旗揚げに際し、離脱への対応を誤った議会、内閣、首相を痛烈に批判した。BBCによれば、自身も候補者として5月の欧州議会選挙に立候補する予定で、「エスタブリッシュメントに教訓を与える」と誓い、離脱に投票した1740万人の人々を裏切った保守党、労働党に対抗する真の選択肢になるとしている。

 結党間もない新党の人気は急上昇中で、ユーガブが4月17日に発表した世論調査では、支持率は労働党22%、保守党15%を抑え、27%と首位に立っている。前出のカーティス氏は、ファラージ氏はお騒がせキャラではあるものの離脱派からの支持は高いと述べる。また今回の欧州議会選挙はイギリスの地方選と重ならないことから投票率が低くなることが予想され、その場合は二大政党の忠実な支持者が足を運ぶ割合が減ると見ている。一方離脱を強く支持する有権者は投票に行くため、ブレグジット党の得票が増えるだろうとし、前回に続くファラージ氏の勝利も十分あり得るとしている(ガーディアン紙)。

 ナショナル・レビュー誌は、欧州議会選挙はイギリスの政治にもブレグジットにも必須ではないが、選挙における重要な再編を示唆していると述べ、二大政党にとってますます困難な時代となることを予測している。

◆EUにも飛び火? 離脱の混乱は続く
 実は、欧州議会選挙前に離脱協定案が下院を通過すれば選挙の必要はなくなる。また、新欧州議会が最初に集まる7月初めまでに離脱協定案が可決されれば、当選した議員が出席する必要もなくなるが、英メディアによれば既存政党から新党まで、選挙の準備を始めている。

 来るとは思わなかったイギリスの議員が欧州議会に戻ってくるという見通しに困らされているのは、すでにイギリスが離脱すると思い準備を進めてきたEU側だとフィナンシャル・タイムズ紙は述べる。欧州議会議員のヒー・フェルホフスタット氏は、イギリスの議員が送り込まれることで、ブレグジットのごたごたがEU政治に持ち込まれることを懸念している。次期欧州委員会委員長のマンフレート・ウェーバー氏も、イギリスの議員がEUの未来について影響を与えるべきではないと話しており、ブレグジットの混乱は、さらに複雑化しそうな様相だ。

Text by 山川 真智子