5月の欧州議会選、ヨーロッパの政局がひっくり返る可能性

AP Photo / Pablo Gorondi

 2014年に行われた前回のEU選挙以降、イギリスは国民投票によりEU離脱を表明し、イタリアとオーストリアはともに極右派を含む政府の連合政権を抱えた。少数政党による脆弱な政府を持つ十数ヶ国のEU加盟国とポーランドが、ハンガリー同様反EU派に転じた。

「ロンドン、ローマ、ワルシャワ、ブダペストそしてウィーンが反EU派や移民反対派に転じ、『城門に迫った敵』どころか『城門になだれ込む敵』といった状況である」と欧州外交評議会のホセ・イグナシオ・トレブランカ氏は述べた。

 これらの動きに加え、欧州議会は今ではより大きな力を持つようになった。盛りを過ぎた政治家に引退後のおいしいポストを用意しすぎたため、欧州議会は今やブレグジットから公害防止規則まであらゆることに実際の意見を持つ、影響力のある意思決定者となっている。

 この705議席の議会に対する最初の予想が、欧州議会自らによって発表された。それによると欧州人民党のキリスト教民主主義政党グループは183議席しか獲得できず、社会民主進歩同盟(S&D)も大幅に議席を失い135議席となり、彼らの連合政権は初めて過半数に満たないとの見通しだ。過去5年間の議会の活動のなかで、ポピュリストが力をつけてきた。

 VoteWatch Europeという影響力のあるシンクタンクは、「議席の25%を獲得するには及ばないものの、右派の国家主義派が躍進するだろう」と述べた。

 VoteWatch Europeは、右派の国家主義派の連合グループが議会の中で2番目の多数派となるだろうと予想している。

 これまで、ポピュリストと過激派政党の声は大きく、驚くような主張をEU議会内で繰り広げてきたが、議会内ではごく限られた影響を持つにすぎなかった。

 しかし議席を増した彼らが足並みを揃えるにつれ、反EU派の力が意思決定により大きな影響力を持ち、ますます緊密な欧州連合というビジョンを掲げる親EU派のエマニュエル・マクロン仏大統領に対する反対運動が再び起こる可能性がある。

 これはオルバン首相にとってはよい知らせで、ユンケル委員長にとっては大きな打撃だ。

 ユンケル委員長は次期欧州委員会委員長には立候補していないため、来る5月に行われる投票が彼らの最終決戦となるとみられる。戦いはまだ終わっておらず、ユンケルは彼の親EUの信念を守りたいと願っている。

「私は降参しません。私はそういうことは好みません。むしろその正反対でありたい」とユンケル委員長は語っている。

By RAF CASERT, Associated Press
Translated by Y.Ishida

Text by AP