5月の欧州議会選、ヨーロッパの政局がひっくり返る可能性
しかしいくつかの派閥がグループ内で明確に対立した指針を発表するなど、地理的にもフィンランドからハンガリー、ポルトガルにいたるまで広がりを持つ各グループは一枚岩ではなかった。オルバン首相の属する、極右で強固な移民反対派のフィデス=ハンガリー市民同盟(フィデス党)のように、グループの分裂も起こりかねない。これによりグループの中核が弱体化し、周辺部が力をつける。
例えば、欧州人民党(EPP)は20年ほど前にイタリア人のポピュリストであるシルビオ・ベルルスコーニ氏を迎えた。オルバン首相のフィデス党がすぐその後に続いた。他のグループも同様の内部抗争に直面している。欧州自由民主同盟(ALDE)はポピュリストのチェコの指導者アンドレイ・バビシュ氏を擁しているが、同氏はEUの農場助成金を悪用し非難を受けた。社会民主進歩同盟(S&D)はルーマニアの社会民主党を擁しているが、批評家によると同党は司法の独立を守ろうとする運動を制限しているという。
しかし、政治的な騒動に最も事欠かないのが欧州人民党(EPP)だ。
オルバン首相は当初、反共産主義的な経歴のため欧州人民党(EPP)に迎えられたが、過去数年間で移民反対派のポピュリストに転向し、独裁的なリーダーシップによる「反自由主義的」社会を求めるようになった。この主張は次第に同党の信念と相容れなくなった。
オルバン首相が先月、「ユンケル委員長はハンガリーのような国家をEUに従わせて見てみぬふりをしており、EUの国境をすべての移民に対し開放している」という趣旨の反ブリュッセル的な発言をしたため、両者の対立は沸点に達した。オルバン首相は、ユンケル委員長をほくそ笑んでいる悪の力に見立てたポスターでブダペストの市内を埋め尽くした。
「ハンガリーでのポスターキャンペーンの文言はユンケル委員長に対するものだと思います。欧州人民党(EPP)の大部分からは、理解しがたく受け入れられないと考えられています」と、オーストリアの首相で、同党の重鎮のセバスティアン・クルツ氏は先月22日に語っている。
現在欧州人民党(EPP)は政治的なジレンマに直面している。どのような結果を招いたとしても、原則にのっとってオルバン首相を放逐すべきか、それとも同氏が他の反EU派のポピュリストグループと結びつかないようにするため、宙ぶらりんの状態で残しておくべきか?
「このような新しい動きの中では、新しい可能性があります」と、イタリアの政治アナリストのアルベルト・アレマンノ氏は指摘している。