自由の女神の2倍の182m、インドに世界一高い「統一の像」 隠された政治的意図とは

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◆ヒンドゥー・ナショナリズムへの傾倒か
 いくつかのメディアが、統一の像の建設に込められた政治的な意図を推察している。

 ワシントンポストは、像の主であるパテルは、現在ではインドのヒンドゥー・ナショナリストにとってのシンボルとなっていること、そして、像が設置されたグジャラート州は古くからイスラム教徒とヒンズー教徒が対立する因縁の地であることを指摘。

 それらの要素により、モディ首相にとって、巨大な統一の像は自身の支持基盤であるヒンドゥー教色の強いランドマークをその地元に作り、さらに国の繁栄と世界での存在感が増していることを見せつけることもでき、3重の利益をもたらすと解説。

 米タイム誌は、統一の像の建設の背景についての考察を特に詳しく述べる。像の建設の構想が発表されたのは2013年、モディ氏がグジャラート州首相で、翌年の首相選候補者であった時代であり、序幕は今年2018年。これを、モディ首相が所属するヒンドゥー・ナショナリスト政党のインド人民党による、2014年と2019年の総選挙をにらんでの戦略であるとする批評家たちの意見があるという。

 さらに、モディ氏が政権についてから、市や駅についていたイスラム式の名前の多くがヒンズー式のものに付け替えられるなど、インドの歴史からイスラム教の存在を消そうとする政策が見られることを指摘。

 その流れで、ウッタル・プラデーシュ州政府発行の観光案内冊子から、州にある、世界中に知られているはずの、ムガール王朝期に建てられたイスラムの霊廟であるタージマハルの記載が削除されたとも伝える。

 記事のなかには、インド人民党が、自身とはまったく関係がない、ライバルで中道左派の政党インド国民会議の所属であったパテルの威光を借りていることなど、像の建設の意義を問うような批判的な内容も書かれており、インドの極端なヒンドゥー・ナショナリズムへの傾倒への懸念ともとれる論調であった。

 来年の総選挙で、ヒンドゥー・ナショナリズムを強く打ち出すモディ首相率いるインド人民党を、国民はいかに評価するであろう。政府によって、その国の外交やインフラ政策は大きく変わる。今や日本への影響が少なくないインド国政の行く末は我々にとっても注視に値するだろう。

Text by Tamami Persson