ナイキ創業者も? 政治を金で買う富豪に 共和党の知事候補に多額の献金

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◆金で大学もコントロール下に 現知事には不満?
 ブエラー氏の対立候補で現職のケイト・ブラウン知事は、アメリカ史上初のLGBTQ知事で本人はバイセクシャルだ。ナイキの社会正義への取り組みに相応しい候補者だが、ナイキからの献金は8万5,000ドル(約950万円)だったという(ローリング・ストーン誌)。ブラウン氏は、ナイト氏は「明らかに欲しいものは何でも金で手に入れることに慣れている」とし、多くの州民が知事を金で買う試みなのかと首をかしげている、と述べている(クオーツ)。

 ナイト氏の金による力は、すでに政治以外の場で発揮されている。ナイト氏とオレゴン大学(University of Oregon)との関係をテーマにした著書を持つ作家のジョシュア・ハント氏は、ナイト氏の金はいつも紐付きだと指摘し、社会奉仕事業を自分が欲しいものを手に入れるための武器にしている、と批判する。公立であるオレゴン大学は、ナイト氏とナイキのコントロール下に置かれているとし、ナイト氏が寄付した8億ドル(約900億円)で、スタジアム建設やアスリート養成が行われているとする。結果として、大学の方針にナイト氏の意思を反映せざるを得なくなっているという(ガーディアン紙)。

 ナイト氏はオレゴン州の年金制度に不満を持っており、巨額の年金の支払いで州が衰退していくと、2017年に地元紙に語っていた。また、政治的リーダーシップの不在を嘆いていた。ブラウン知事は、法人税を上げることで年金支払いの不足分を埋めるとしているが、ブエラー候補は公務員を確定拠出年金に移し、年金支払いの上限を定めることを提案している。ここがナイト氏のブエラー候補支援のポイントだったのではないかと見られている。

 なお、11月7日(日本時間)に行なわれた開票の結果、オレゴン州は現職ブラウン氏が当選を果たしている。

◆富豪が動かす政治 静かに確実に進む支配
 オレゴン州立大学のビル・ランチ教授は、ナイト氏も巨額の政治献金をする他の富豪の仲間入りをしたと述べ、ナイト氏自身が右寄りにシフトしているのではと述べている(ローリング・ストーン誌)。

 フォーチュン誌が紹介したノースウエスタン大学の研究によれば、アメリカの上位100人の富豪たちは、静かに政治に影響力を持ち、保守的な政策を後押ししていることが確認されているという。多くが、たとえ社会全体のためになるものであっても、政府による規制や、自分の利益と相反する政策などに反対する。しかし、表立ってそのような一般受けするはずのない意見を述べることは少なく、影で国をコントロールしているということだ。

 研究者たちは、公の精査を避けることで、富豪たちは責任からも逃れているとし、「このようなステルス政治は民主主義にとって有害だ」としている。

Text by 山川 真智子