国家主席の任期撤廃、習氏の長期政権に内外から不安の声 「負の連鎖の可能性も」

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◆独裁政権への不安
 一方でCNBCは、中国で独裁政権が誕生する可能性をはらんでいる今回の発表に対する懸念の声を報じている。そうした声のひとつとして、世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社であるユーラシア・グループのカラム・ヘンダーソン氏は「もし何かうまくいかなくなったら、非難されるのはたった一人の人物です。中国が成功するか問題を抱えるかはその人が負っており、こうした戦略は中期的には顕著なリスクがあります」と述べている。また、調査会社コンプリート・インテリジェンスのアナリストであるトニー・ナッシュ氏は「今回の改正案は個人を中国体制の上にかかげるようとするものであり、それはじつに危険なことです。中国はWTOに加盟していますし、多くの外国人投資家がいます……そうした投資家は中国がより民主的になり、貿易交渉に積極的に合意するようになってほしいと思っているのです」と言った。

 CNBCの記事は、習近平氏が国家主席に無制限にとどまることに対して、中国国内SNSから不安の声が上がっていることも伝えている。なお、SNSからの批判投稿は中国当局によって検閲されている。

◆中国経済への悪影響の懸念も
 ワシントン・ポスト紙もまた、ワシントン・ポスト元中国支局長のジョン・ポンフレット氏が執筆した国家主席の任期撤廃を不安視する記事を掲載した。同氏が多くの知己の中国人と話したところによると、中国人もまた任期撤廃に関して懸念を抱いているとのこと。彼らが懸念していることのひとつとして、習近平氏が国家主席に就任してから、同氏は国有企業が抱える多額の債務の処理にあまり熱心ではないことがある。

 以上のような証言をふまえたうえで、ポンフレット氏はもし習近平氏の政権運営がうまくいかなければ、経済成長は鈍化し国有企業が抱える多額の債務がデフォルト(債務不履行)や倒産の連鎖を引き起こすだろう、と記している。

Text by 吉本 幸記