トランプ氏の隠し玉のはずが……狂騒の末に公開された「メモ」の中身とは?

U.S. Congress

 米首都ワシントンでは、下院情報委員会の委員長を務めるデビン・ニューネス(共和党、カリフォルニア州選出)下院議員が書き、機密情報として扱われていた「メモ」をめぐり、その内容と公開について共和党の一部議員と民主党の間で攻防が繰り広げられていた。さんざんメディアや司法省を騒がせた後、今月2日になりトランプ大統領が件のメモの機密扱いを解除して一般公開された。

 しかし、ニューネス議員が「米連邦捜査局(FBI)と司法省のロシア疑惑捜査に決定的打撃を与える内容」などと謳っていたそのメモは、実は「肩透かし」を食らうほど内容が薄く、すでに知られている事実以上のことは書かれていなかったことが判明。同議員は失笑を買っている。

◆実証されなかったメモの争点
 タイム誌(電子版)の記事によると、ニューネス議員の「メモ」は、FBIが2016年の大統領選中にトランプ陣営の顧問を務めていたカーター・ペイジ氏を監視する際、外国情報監視法(FISA)を政治目的に悪用したというものだった。さらにニューネス議員の主張によると、ペイジ氏にFISAが適用された理由が、元英国情報機関員がまとめ、信憑性が実証されていないトランプ氏に関する報告書であったという。その報告書にはトランプ氏がロシアに不利な証拠をつかまれている、という内容が書かれていた。

 しかし米誌ニューヨーク(電子版)の2月3日付記事によると、ペイジ氏は2013年、自分が「ロシア政府の顧問である」と自慢していたという。当然の成り行きとして、ロシアのスパイであることを疑われたペイジ氏は、トランプ氏が大統領選に出馬するかなり前の2013年よりFBIの監視対象として捜査を受けていた。

 また米政治サイト『ヴォックス』の2月2日付の記事によると、ニューネス氏のメモには2016年10月21日に司法省が提出したペイジ氏に対するFISA適用申請書について言及されているが、その1ヶ月以上前にペイジ氏はトランプ陣営の顧問を辞職している。つまり、FBIのペイジ氏に対するFISAとトランプ陣営は、少なくともその時点でほとんど関係がなかったと言っても間違いではないだろう。

◆メモが証明するのは「頭の悪さ」?
 メモの内容が噛み合わないばかりか、米政治専門紙ザ・ヒル(電子版)の2月2日付記事によると、ニューネス氏は米FOXニュースのインタビューで、メモの土台となったFISAの申請書を「読んでいない」と発言。下院監視委員会の委員長を務めるトレイ・ガウディ下院議員(共和党、サウルカロライナ州選出)によるFISA申請書のレビューを基にしたと言うのだ。

 ヴォックスではニューネス氏のメモについて、「メモを読んだ後、読者が達する結論は『このメモには(隠されていた秘密が)何も存在しない』ということだけだ」と述べた。また、米情報サイト『マッシャブル』は、「デビン・ニューネスのメモは、私たちが思ったより彼の頭が悪かったことを明らかにした」とこき下ろした。

 にもかかわらず、トランプ大統領は、メモ公開後にツイッターで、「このメモは『トランプ』の(ロシア疑惑)捜査での嫌疑を全面的に晴らすものだ」と大胆にコメントし、有識者の目を白黒させた。メモをよく読んでおらず内容を理解していないのか、それとも自分の支持者は難解なメモを読まないと踏んでいるのかは定かではないが、トランプ大統領が散々な評価を受けたこのメモの内容をねじ曲げ、今後政治目的に利用しようと画策していることは確かなようだ。

Text by 川島 実佳