オバマ、ブッシュ氏にあって、トランプ氏にない大統領として重要な資質

Pablo Martinez Monsivais / AP Photo

 大統領と娘のイヴァンカ・トランプは2月1日、イエメンでの戦闘で命を失ったアメリカ海軍特殊部隊所属ウィリアム・ライアン・オーウェンズ(William “Ryan” Owens)氏の遺体の帰還を見守るためデラウェア州のドーバー空軍基地をひそかに訪問した。しかし、悲しみに沈む遺族の心情は複雑だった。

「この件について騒ぎを大きくしたくないと関係者には伝えましたが、良心に従って大統領とは話をしませんでした」と、亡くなった海兵隊の父親ビル・オーウェンズ(Bill Owens)氏は後にマイアミヘラルド紙に語った。

 しかし今月下旬、ライアン・オーウェンズ氏の未亡人であるキャリン(Carryn)氏は、トランプ大統領の議会演説の場に立ち会った際、大統領から謝意を示されたうえで「ライアンが遺したものは永遠に刻まれる」という言葉を聞いて涙を流した。

 トランプ大統領は、時として柔和な一面を示すことがあった。彼がシリアにミサイル攻撃を命じた理由の1つは、「罪のない、小さな乳児」たちの画像だった。シリアのアサド大統領による所業とアメリカが結論づけた、化学兵器による被害を目にした後のことだった。

 戦没者追悼記念の日にアーリントン国立墓地にいたトランプ大統領は、海兵隊の小さなレプリカの制服に身をまとった6歳の子どもが語る父親についての話に優しく耳を傾けていた。この少年がまだ生まれたばかりの頃、訓練中の事故で父親を失ったのだった。

 そして、トランプ大統領は、同名の子息が国内で不法に殺害されたジャミエル・ショー(Jamiel Shaw)氏にも優しく寄り添っていた。

 次期大統領に選ばれた彼はオハイオ州立大学に向かった。それは、1人の男が車を群衆の中に突入させ、その後ナイフで殺傷した事件のあった10日後のことだった。この事件では13人ほどが負傷し、キャンパス内にいた警官が犯人を射殺した。

 トランプ氏は当時、警官および複数の被害者と個人的な立場で会っている。そのうちの1人、トランプ候補に投票しなかったマーク・コーンズ(Marc Coons)氏は、当時の状況について、心配顔のトランプ氏はソマリア難民だった犯人にしか関心がないのではと気になっていたという。

「彼は何もひどいことは言いませんでした。その点は評価できるのですが」と、コーンズ(30)は語った。彼は肩の近くに切り傷を負ったが、今では回復している。しかし今でも忘れられない瞬間は、トランプ候補と一緒に写真を撮っているときに訪れた。大統領就任前のトランプ氏は彼に、「車でやられたのかナイフでやられたのか」と聞いた。その際、「車(car)」を動詞にし、「車でやられた(carred)」と表現した。

 コーンズは、「少し無神経だなと思いました。ただ聞き流しました」。

本稿執筆に際してはAP通信社のモニカ・マーサー(Monika Mathur)氏より協力をいただいた。
By JULIE BYKOWICZ, AP
Translated by Conyac

Text by AP