中国・三峡ダム崩壊説が再浮上 記録的大雨で不安高まる

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◆なくてもよかった? 下流住民が犠牲に
 崩壊説だけでなく、そもそもの三峡ダムの目的と安定性にまで批判が出ている。台湾の英字紙、台湾ニュースは、発電に加え、三峡ダム建設の主要目的は長江流域の繰り返される洪水を止めるためだったはずだが、今回は機能していないと報じている。

 同紙によれば、今年の洪水はダムをも圧倒するかもしれないという不安から、伝えられるところでは、長江下流の水門を解放することで、ダムの水位を低く保っているという。しかし、三峡ダム下流の町では大洪水となっている。住民たちはソーシャルメディアに被害の様子を撮影した映像を投稿しており、ダムの放水がその原因ではないかと疑いの目を向けている。ブルーバーグによれば、すでに27省で約3800万人以上が被災し、死者も141人に上っている。

 ロイターも、三峡ダムに疑問の声を上げる専門家の意見を掲載している。中国の地質学者で巨大ダム建設に否定的なFan Xiao氏は、三峡ダムの貯水能力は平均的な洪水の水量の9%にも満たないとする。上流で生じた洪水を部分的、また一時的にとらえることしかできず、長江中流、下流における豪雨で生じた洪水対応には無力だとしている。

 さらに、三峡ダムやほかの大規模ダムプロジェクトは、長江下流への堆砂の流れを変えることで洪水を悪化させる可能性もあると同氏は指摘し、水力発電も洪水のコントロール機能を弱めていると述べる。治水にばかり目を向けると、洪水を阻もうとする川や湖の自然の力を見落とし、それを弱めてしまうことさえあるとしている。

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Text by 山川 真智子