「社交的なアメリカ人」に変化 忘れられる対面コミュニケーションのメリット

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◆親のおせっかいも? 子供主体の社交の場がない
 トンプソン氏はまた、スポーツ・ポップカルチャーサイト『The Ringer』のポッドキャストで、社会学者のエリック・クリネンバーグ氏と対談している。そのなかで、若者の対面での社交の減少の一因として、親による介入が議論された。要約すると、以下のようになる。

 昔は、子供は道路や公園、図書館などで遊んだもので、子供自身が自分の社交の時間を支配していた。しかし今は、親が安全を考え、子供を外で遊ばせることを恐れている。一部の社会学者は『恐怖の文化』と呼んでいるが、殺人などだけでなく、遊具の安全性、スポーツのやり方、学校に犯罪者がいる可能性など、危険に関しては、今の中産階級の子供たちを取り巻く環境は、以前とは異なる。

 さらに、親、特に中産階級や専門的な職に就く親は、子供が将来社会でうまくやっていけるように、子供のスケジュールを管理して、フォーマルな付き合いの場を用意するようになった。一方子供たちは、自由な時間が減るにつれて、親が介入しなくても自分たちでコントロールできる、ネットの世界を発見した。だから子供たちがそういう場所に群がるのは、ある意味当然と言える。

 この傾向は、パンデミックが起きた2020年以降のものだと思われがちだが、実は数十年前からあり、パンデミックは加速要因でしかない。

◆対面で気分向上 メリットに気づかない人も
 米疾病対策センター(CDC)の調査では、10代の若者のうち、悲しさ、絶望、不安が続くと答えた人の割合がかつてないほど高くなっているとトンプソン氏は指摘。スクリーンタイム(画面を備えたデバイスの使用に費やされた時間)と携帯電話が大きな原因だと見ている。(WBUR)

 社会心理学誌「ジャーナル・オブ・ソーシャル・サイコロジー(Journal of Social Psychology)」に掲載された研究では、対面の付き合いはスクリーンタイムよりも気分の向上をもたらすという結果が出ており、画面から離れた生身の交流が、心の問題の緩和・解消に役立つと思われる。

 もっとも同じ研究で、対面の会話よりテキストメッセージのやり取りのほうが楽しめそうだと予測した人のほうが多かった。これは、会話で得られる気分的なメリットを人は常に認識しているわけではないことを意味しているとも言え、まずはスマホを取り出す習慣を変えることが先決と言えそうだ。

Text by 山川 真智子