ナワリヌイの意志は受け継がれるか ロシア反体制指導者の死、世界に広がる悲しみ
◆妻の訴え、制裁、世界各地に広がる悲しみ
1976年生まれ、47歳の若さで死去したナワリヌイは、もともと弁護士として働いていたが、2004年ごろからモスクワで活動家として政治活動を開始。以後、ロシアのトップ政治家や国営企業の汚職問題の告発に注力し、オンライン発信を駆使しつつ、多くの群衆を巻き込んだプロテストを率いてきた。2013年にはモスクワ市長選に出馬し、27%の支持を獲得して2位の座につけ、選挙活動を通じて約290万ドル(当時のレートで約3億円)の資金を獲得した。その間、ナワリヌイに紐づいているとされるいくつかの会社における横領疑惑にかけられ、5年の実刑判決や自宅軟禁などの刑が言い渡されていた。ナワリヌイはこれらの疑惑は、政治的な動機に基づいたものだと反論していた。
2020年、ロシア政府が直接関わったとされる毒殺未遂の被害にあい、ドイツに搬送されて奇跡的に生還した。2021年1月、回復を果たした彼はロシアに戻ったが帰国直後に逮捕され、以降は家族から引き離され、自由を奪われていた。昨年、新たに19年の禁錮刑を言い渡され、事実上、終身刑の身となったと彼は理解していたようだ。当初モスクワから235キロ離れた場所にある刑務所に収監されていたが、年末に、ロシア北部のヤマロ・ネネツ自治管区に位置し、ロシアの最も厳しい刑務所の一つとされるIK-3に強制移送されていた。
ナワリヌイの死亡が伝えられてからわずか数時間後、妻のユリアがドイツ・ミュンヘンで開催されていた安全保障会議に登壇。彼女は自分の子供たちのもとにすぐ戻るか、ドイツで登壇するか迷ったが、ナワリヌイだったらどうするかと考えて登壇を決意したとしたうえで、プーチンとプーチン政権に対する不信と、さまざまな悪事に対する責任を強く訴えた。
ナワリヌイの死亡に対し、アメリカのバイデン大統領は責任はプーチンにあるとコメント。アメリカ政府はロシアに対して新たな制裁を発表した。またイギリスについてもIK-3刑務所の所長と副所長5名に対して資産凍結の制裁を科すと、キャメロン外相を通じて発表した。また、モスクワをはじめ、トビリシ、ベルリン、ワシントンDC、ロンドンなど世界各都市では、市民による追悼の意思を示す献花やロシア大使館に対するプロテストなどが発生した。
今年3月に大統領選を控えているロシア。打倒プーチンを訴えてきたナワリヌイを、プーチンはこの選挙戦におけるリスクと捉えていたという見方もある。突然訪れたナワリヌイの死だが、残念ながら、まったく予期せぬものということではなかった。妻のユリアや彼のチームは、ナワリヌイの意志を受け継いだ活動を続けると思われるが、リーダーを失った打撃は大きい。
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