いじめ対策に本腰を入れるフランス 加害者に厳罰、サポート強化
◆いじめ対策に取り組むのが遅かったフランス
とはいえ、世界的に見れば、フランスのいじめ対策は決して進んでいるわけではなく、最初にスクール・ハラスメント問題が提起されたのも2011年だった。スカンジナビア諸国は1970年代、イギリスは1980年代、カナダも1990年代から対策を取ってきたことと比べるとかなり遅い。
アクチュ紙によると、この時、問題提起を行ったのは当時のリュック・シャテル教育相だった。つまり、教育現場から政府に問題が上がってきたのではなく、政府側から教育機関に対して注意を促したのが最初で、ほかの多くの国とは逆の流れだ。それだけフランスの教育現場では、ごく最近までいじめに関する問題意識が欠如していたとも言える。
その後、2022年3月の法改正で、いじめへの厳しい罰を定めている。たとえばこれによれば、いじめの被害者が自殺あるいは自殺未遂をした場合、加害者には3~10年の懲役刑と、4万5000~15万ユーロ(約730万~2400万円)の罰金が科せられる。言いかえるなら、この法改正は、スクール・ハラスメントという新たな犯罪概念を作ったわけだ。
「いじめ」という犯罪に対するフランスのこれまで以上に真剣な取り組みと、その成果はどうなるだろうか。注視したい。