アメリカの危険な環境で働く移民の子供たち…調査報道で明らかに

メキシコからアメリカに入国しようとしている移民(2022年12月21日)|Andres Leighton / AP Photo

◆未成年が守られていない状況
 連邦法は、未成年者が工事現場や工場などの危険な場所で働くことを禁じている。また、農場以外の場所において、16歳以下の子供が学校のある日に3時間以上、もしくは夜7時以降勤務することも禁じられている。しかしながら、危険できつい仕事はそもそも供給が少なく、未成年の移民の子供たちがその担い手となってしまっているのが現状だ。法令違反に対する罰則も基本的には罰金のみで、法令遵守が徹底されにくい状況だ。

 記事によると、昨年アメリカに保護者なしに入国した未成年者の数は13万人にも上るという。この数字は5年前の3倍にあたり、今年もさらに増えることが予測されている。これらの未成年者は不法移民というわけではなく、制度上は政府の保護・管理下にある子供たちだ。米保健福祉省(Department of Health and Human Services:HHS)には、子供たちが入国した際は、適切な保護者のもとに送り届け、人身売買や搾取から子供たちを守る責任がある。昨今、あまりにも未成年移民の数が増え、多くのケースを処理するために、保護者の審査プロセスが簡素化されてしまった。ソーシャルワーカーたちは、子供たちが必ずしも安全な状況にないことをわかっていながらも、ケース処理の迅速化という政府の方針のプレッシャーを抱えつつ、日々の対応に追われているという状況だ。

 HHS関係者によると、2010年ごろは未成年の保護者は両親であることが大体のケースだったが、2014年ごろからはその状況が変わり、親族の知り合いなど子供と面識もないような人物が保護者になるケースも増えた。保護者になることで多額の金銭を要求するビジネスも存在し、移民の子供たちは自分の生活費の確保や仕送りだけでなく、保護者に対する借金の返済といった金銭的プレッシャーを抱えるケースもある。

 ドライヤーの1年近くにわたる実態調査によって、児童労働の具体的な実態が明るみになったが、子供たちが工場などで働いているという状況は明らかで、企業の責任者や関係者らが見て見ぬふりしてきたことだと語る。しかしながら、記事を受け、政府は意外にも早く動き出したと彼女はポッドキャストで驚きを示した。バイデン政権はタスクフォースを編成し、児童労働に関与する企業をあぶり出すとのことだ。児童労働が発覚すれば、監督者に対して1年の実刑を科すという法案も議論されている。一方で、HHSに関しては根本的な改革がなされていないようだとドライヤーは言う。子供たちを守りつつも彼らの生活や仕送りのための就労をサポートするためには、単に違法就労を禁止するだけでなく、就労許可証を取得するための法的支援も必要だ。今後さらに増加すると見込まれる未成年移民に対して、より包括的な支援が求められる。

Text by MAKI NAKATA