アメリカの危険な環境で働く移民の子供たち…調査報道で明らかに

メキシコからアメリカに入国しようとしている移民(2022年12月21日)|Andres Leighton / AP Photo

 アメリカにおける移民の不法な児童労働の実態がニューヨーク・タイムズの調査報道記者ハナ・ドライヤー(Hannah Dreier)によって明らかになった。政府も早急に対応に動き始めた。

◆名の知れたブランドの工場勤務も
 2月25日に公開されたドライヤーの記事は、中米のホンジュラス、エルサルバトル、グアテマラなどからメキシコを経由してアメリカに入国してくる未成年移民の数が増えており、その多くが適切な保護者不在のまま、工場や工事現場などの危険な環境で働いているという実態を明らかにした。ドライヤーはAP通信やワシントン・ポストなどでのキャリアを経て、2022年より調査報道記者としてニューヨーク・タイムズに所属。過去にピューリッツァー賞のファイナリストに選ばれるなど実力ある人物で、10年近く移民に関する報道を行ってきた。今回の記事は、アメリカ20州における100人以上の未成年移民からの聞き取り調査、関連記録の参照、そして弁護士、ソーシャルワーカー、教員、当局の関係者などへのインタビューをもとにしたものだ。

 たとえば、15歳のキャロリナ(Carolina)はアメリカのシリアルの国民的ブランド「チェリオ(Cheerios)」のミシガン州の工場で、ひたすらシリアル袋の箱詰め作業を行う。工場にはキャロリナのような未成年の子供たちが普通に働いている。ほかにも国民的なブランドの食品工場や、社会的な活動で知られるアイスクリームメーカーのベン・アンド・ジェリーズ、健康志向・高級志向のスーパーマーケットチェーン、ホールフーズに卸される食品の製造を行う工場で、未成年の子供たちが働いている。彼らの多くは、日中は学校に行き、放課後から夜にかけて工場で勤務する。場合によっては12時間、14時間といった長時間労働を課せられ、疲労のため、学校に行っても勉強どころではない。生活と母国への仕送りのために勤務を優先し、学校をドロップアウトせざるを得ない子供たちも少なくない。

Text by MAKI NAKATA