全米でインフル、コロナ、RSウイルスが同時流行 小児用解熱剤が不足
◆記録的な需要増 増産体制に
米食品医薬品局(FDA)は先月、呼吸器系感染症のペニシリン系抗生物質アモキシシリンの深刻な不足を警告していた。FDAのロバート・カリフ長官は、「供給を改善するため製造業者に働きかけているが、現在の需要増は記録的な事態だ。(略)市場には感染状況に対応するのに十分な薬があるので、必要以上に購入しないよう協力してほしい」と述べた(CNBC、12/21)。
医薬品メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンは、「一部の店舗ですぐに購入できない状態かもしれないが、小児用タイラノールあるいは小児用消炎鎮痛剤モトリンは大幅な品不足ではない」と発表した。前例のない需要増に対応するため、24時間体制で生産しているという。(CNBC)
全米の独立薬局1万9000店舗以上が所属する地域薬剤師会 (NCPA)のヒュー・チャンシー会長は、経営する店舗のうちの一部で、「医師にお願いした処方箋をもとに、薬剤師がイブプロフェンやアセトアミノフェン成分の液体製剤の代替薬を調剤している」と説明する。この状況について、「34年の経営人生でこういう経験はいまだかってなかった」と語る。米小児科学会(AAP)感染症委員会は、鼻腔スプレー、加湿器、メントール入りの摩擦剤などを、子供を楽にしてあげるための代替品として推奨している。(NBC)
◆小児用病院病床率76% タミフル備蓄放出へ
今年のインフルエンザは例年より6週間早く始まり、しかも重症化のリスクが高い。米疾病対策センター(CDC)によると、10月1日以降の感染件数は少なくとも1500万件に達し、うち入院件数は15万件を超え、65歳以上と4歳以下の乳幼児の入院率が高い。これまで子供30人が死亡した。
また、米保健福祉省(HHS)の統計によると、RSウイルスへの感染率の急増によって、今月19日時点で全国の小児病院の病床使用率は76%に達した。成人の間でもインフルエンザは流行しており、一部の州では抗ウイルス剤のタミフルや市販薬の需要が高まっている。バイデン政権は21日、タミフルの需要急増に対応するため、非常時用の国家備蓄から放出する方針を明らかにした。タミフルは、生後2週以降のインフルエンザの治療に処方可能になっている。
これから人々が集うクリスマスや年始を迎え、感染者数はうなぎ上りになると医療関係者らは見ている。サイナイ病院小児科医ダナ・シルバー氏は、「クリスマス以降に感染者数が増え、今年は厳しい冬になると思う。おそらく、2月頃に少し落ち着くでしょう」と語る(CBSニュース、12/22)。
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