フランス、なぜ若者に無料コンドームなのか? 日本と違う避妊事情
◆西側諸国で再び増えつつある性感染症
性感染症は、現代における大きな健康の脅威の一つだ。世界保健機関(WHO)は、世界では毎日100万人以上が性感染症(STI)に感染していると見積もっている。1年だと3億6500万人以上が感染している計算だ。
フランスを含む西欧においては、1980年~1990年代初頭には、HIV/AIDS予防キャンペーンのおかげで、淋病、梅毒、およびその他の細菌性の性感染症の発生率が減少していた。しかし、1990 年代の終わりから 2000 年初めにかけてコンドームの使用率が減少したことから、ほとんどの西側諸国で根絶されたとみられていた性感染症が再発し、感染数も再び増加した。(フランス公衆衛生局、11/30)
日本においても2011年ごろから梅毒が増えはじめ、特にここ数年で急増している。2010年には621人にだった新規感染者が、2022年は11月19日時点で1万743人となっている。また、2002年をピークに減少していた性器クラミジア感染症や淋菌感染症もここ数年、わずかではあるが増加傾向がみられる。
◆不治の病もある性感染症
性感染症を引き起こす細菌、ウイルス、寄生虫は、現在30種類以上知られている。そのうち最も多いのは、細菌性の梅毒、淋病、クラミジア、寄生虫によるトリコモナス症、ウイルス性のB型肝炎、性器ヘルペス、HIV、ヒトパピローマウイルス(HPV)の8つだ。このうち、梅毒、淋病、クラミジア、トリコモス症については完治の可能性があるが、後者4つは完治が難しい感染症である。(WHO)
治癒が可能な性病であっても、不妊の原因になったり、胎児の健康に悪影響を及ぼしたりする感染症は多い。日本で急増している梅毒も、感染が進めば命にかかわることのある病だ。また、淋病を引き起こす淋菌は、次々と抗生剤への耐性を高めているので、近いうちに治療できない感染症となってしまう可能性がある。(WHO)