語学教育の域を超えたアメリカの「イマージョン教育」とは? ある日本語教育の取り組み

スペイン語によるイマージョンプログラムはアメリカのイマージョン教育の約37%を占める
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◆ポートランド公立学校の取り組み

リッチモンド小学校のPTAが今年3年ぶりに主催した春祭りの様子(PPS「親の会」提供)

 オレゴン州ポートランド公立学校区(PPS)では、1989年から日本語のイマージョン教育が開始された。キンダーガーテン(幼稚園の年長に該当)から、12年生(高校3年生該当)まで、13年間一貫した日本語イマージョン教育を約1000人の学生に提供しており、公立学区としても全米でも1、2位を争うイマージョン教育推進学区だ。なお、PPSではほかに、中国語、スペイン語、ロシア語、ベトナム語によるイマージョン教育を提供する学校を有する。

 PPSの日本語イマージョン教育のアプローチは、英語と日本語を50%ずつ採用した部分イマージョンであるが、大きな特徴として、プログラムを下支えするNPO団体「親の会」を有する点が挙げられる。同NPOは、1989年にPTAとして始まり、1997年にNPOとして組織化した。組織の目的は、日本語クラスの効果を高めるために必要な「日本語を話すインターン生」を日本から召喚。その費用を確保するための資金調達を行うことや人選の手配を行う。加えて小中高と、節目のタイミングで学生を日本に短期留学させ、夏休みには親の会が主催の「サマーキャンプ」を5週間にわたって開催するという仕組みを持つ。

 授業単位での没入感を構築する以上に、実際に日本文化を生で体感できる機会を提供することは、言語教育以上の意味を持つ。実際、PPSの日本語イマージョン教育の卒業生には、その後日本の文部科学省が日本全国の公立小学校に英語教師を配置するための仕組みである「JETプログラム」に参加し来日する人や、日本の食文化に関するスタートアップビジネスを始めた卒業生など、卒業後日本と何らかの関係を持ち続ける人も多いという。

Text by 寺町 幸枝