バッファロー銃乱射は憎悪犯罪 右派が広める「人種交代説」とは
◆バイデン大統領「白人至上主義は毒」
NBCニュースによると、カールソンはこれまで自分の番組『タッカー・カールソン・トゥナイト』で幾度となくリプレースメント・セオリーについて言及しており、「(左派の)エリートが白人有権者を『第三世界』の移民と交換しようとしている」と事実無根の説を展開して、白人視聴者の危機感を募らせているのである。
2017年に起こったバージニア州シャーロッツビルで開催された白人至上主義者のデモ行進で、参加者が「ユダヤ人は我々を交換できない」と声を合わせて叫んでいたことはよく知られているが、この考えの土台となっているのがこの陰謀論であり、現代の極右派を突き動かす原動力なのである。いまのアメリカでは国際テロよりも極右派によるテロが多いのも頷けるし、2020年1月6日に発生した国会議事堂襲撃事件で、トランプ氏が「大統領選に自分が勝利した」と虚偽の主張を展開し、やがてそれが同氏主導の政権転覆事件に繋がっていったことも、根底には同じ考えがある。
バッファローの銃乱射事件後、タッカー・カールソンやFOXニュースは数々の批判を受けており、また政治情報紙ヒルによると、バイデン大統領も18日にバッファローを訪問中に行ったスピーチで、白人至上主義を「この国の毒だ」と呼び、「権力と政治的利益、そして金儲けのために嘘を広げる人々を非難する」と述べ、具体的な名前こそ挙げなかったものの、タッカー・カールソンや一部共和党政治家を批判した。しかしいまのところこのような虚偽の主張を弾劾する対策は出されておらず、時間が経てばまた元通りになるのがいつものパターンである。
2022年中間選挙が近づいたいま、カールソンとフォックスニュースが方向を転換するとは思われないが、バイデン大統領をはじめ、事件の原因となる嘘に対する何らかの責任を問う動きも出てきている。これ以上アメリカの分断を大きくしないためにも、アメリカはトランプ氏やタッカー・カールソンをはじめ、大事件につながる嘘をバラまく人々を野放しにしておく風潮に終止符を打つべきだろう。
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