感染爆発で窮地の北朝鮮 しょうが湯、塩水うがいで対策 「ワクチンは手遅れ」とも
◆ゼロコロナ路線にきしみ
北朝鮮はこれまで、非常に極端なゼロコロナ政策を進めてきた。2020年に韓国の海軍関係者が泳いで軍事境界線を越え北朝鮮入りを図った際、コロナ感染の可能性があるとして北朝鮮はこの人物を射殺し、遺体を水上で焼却している。昨年2月には厳しい国境封鎖を受け、在北朝鮮のロシア外交官とその家族が、トロッコに荷物を乗せ列車の軌道上を手で押して帰国するという異例の移動を迫られた。フィナンシャル・タイムズ紙はこうした逸話がいずれも、ワクチンと食糧の不足する北朝鮮が国境封鎖に頼らざるを得ない実情を如実に物語っているとみる。
過去には国際支援の枠組みを通じて北朝鮮に対し、ワクチン寄贈の申し出も行われていた。金正恩政権はこれら申し出を拒否し、ゼロコロナ路線の堅持を打ち出している。これに対し米ワシントン・ポスト紙(5月19日)は、「このアプローチは失敗に終わった」との厳しい分析だ。専門家は「2500万人という北の国民が新たな複数の変異株の肥沃な土壌となる」事態を懸念しており、同国の死者数は10万人にも及びかねないとみる。
◆米研究所、集団接種には「遅すぎる」
金政権としては改めてワクチン接種も視野に入れたいところだが、すでに手遅れとの指摘が出ている。米ミドルベリー大学モンテレリー国際学研究所のジョシュア・ポラック上級研究員は、ワシントン・ポスト紙に対し、「オミクロンの影響を緩和する目的での集団接種キャンペーンを行うには、遅すぎるように思える」との見解を明かした。すでに感染が拡大しているとみられる以上、広範な接種を迅速に展開することは難しく、現在できる国際支援は抗ウイルス薬の寄贈などに留まるとの見方だ。
BBCが伝えたところによると、北朝鮮国営メディアは「消毒液」の製造のために「1000トンの塩」が平壌に到着したと誇らしげに報じている。塩水うがいと鼻洗浄でウイルス対策をしたい思惑だが、新型コロナウイルスは気道の深くにまで入り込むため、一度体内に侵入してしまうと効果は薄いとされる。
国外からの支援を断り、もてる限りの資源でゼロコロナを堅持したい北朝鮮だが、急拡大を受け窮地に立たされている。
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