野菜が怖くて食べられない人たち ラカノフォビアとは?

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 ドイツに住む31歳のオラフ(仮名)さんもラカノフォビアで、人付き合いにもかなり影響が出ていたという(現在は、催眠療法により克服)。ジャガイモ、タマネギ、キドニービーンズなどごく少数を除いて、野菜も果物も食べられなかった。ピーマンをかじると想像しただけで、崖からバンジージャンプをするような恐怖心を抱いたという。息子に野菜の離乳食を与えるときでさえ、離乳食を見ないようにしていた。(jameda)

 昨秋イギリスで、4歳から食べ物全般に恐怖心を抱いている34歳のエマさんのことがテレビで紹介された。フライドポテト、パン、チーズサンドイッチくらいしか食べられず、自分の健康のことが気になり、専門家たちにアドバイスを求めた。

◆原因は「幼少期」にある?
 先のファビエンヌさんは、バーゼル大学精神科クリニック(UPK)の心理学者マルガレーテ・ボルテン氏にラカノフォビアについて尋ねた。ボルテン氏によると、子供たちは発達の過程で食べ物の好き嫌いが出てくるが、この時、養育する大人たちが野菜や果物も食べるべきだと心配して子供たちを脅して食べさせたり、スプーンで口に入れて無理矢理与えることを繰り返したりすると、食事が子供たちにとって非常に不快な経験となり、野菜や果物を避けるようになるという。

 臨床心理士や精神科医、そのほかの専門家が執筆している英メンタルヘルスの情報サイト『オプティミストマインズ』でも、ラカノフォビアの人は幼少期に野菜を無理に食べさせられたり、食べないと罰を与えられたりした経験があるかもしれないと指摘している。さらに、まったく別のことが引き金になり得ることも指摘する。野菜栽培の様子を見てその周りにいたミミズや昆虫のことが気になってしまい、自分がその野菜を食べたせいでミミズや昆虫が死んでしまうのではと心配になったり、もし野菜の種を飲み込んでしまったらその種が自分の体内で成長するかもしれないと考えたりする人もいるという。

 同サイトによると、いまのところラカノフォビアの原因は明確にはわかっていない。遺伝と環境の両方が関係していることもある。また家族に不安を伴う精神疾患の人がいる場合は、ラカノフォビアになる確率が高まるかもしれないという。

Text by 岩澤 里美