欧州、ヨウ素剤に客が殺到 ロシア侵攻で高まる核の恐怖

Melinda H / Shutterstock.com

◆被曝予防になる仕組み
 一方、安定ヨウ素剤は、甲状腺の内部被曝(ひばく)の予防・低減に用いられることで知られている。通常、ヨウ素は食品から摂取され体内の甲状腺に蓄えられるものだ。しかし被曝すると、消化器官のほか気道からも放射性ヨウ素が体内に取り込まれ甲状腺に蓄えられる。そうしてこれは甲状腺がんなどのリスクを高める原因となる。だが放射性ヨウ素が体内に取り込まれる前に、あらかじめ非放射性ヨウ素剤を服用して血中のヨウ素濃度を高めておけば、甲状腺への放射性ヨウ素の取り込みが抑制される。そのために用いられるのが安定ヨウ素剤だ。

◆原発付近の住民への配布
 日本でも福島第一原発の事故の際には住民への安定ヨウ素剤配布が行われた。また国は原発から5km圏内の住民に事前配布することを決めているが、自治体によっては配布対象をさらに広げている。たとえば、鳥取県では5~30km圏内の居住者についても2018年から一部希望者に安定ヨウ素剤の事前配布をしている。

 原発大国であるフランスも同様で、1997年から安定ヨウ素剤の配布を行っており、2021年からは対象を国内19ヶ所の原発の20km圏内に広げた。

Text by 冠ゆき