世界からシニア旅行者が消えるかもしれない理由

Firdia Lisnawati / AP Photo

◆保険加入証明を入国条件とする国急増
 それに加えてこのところ急増しているのが、保険加入証明を入国条件とする国だ。新型コロナ以前は中国、ロシア、キューバ、アルジェリア、モンゴル、サウジアラビアの6ヶ国に過ぎなかったが、現在は41の国と地域に膨れ上がっている(フィガロ紙、2/2)。

 具体的にはアフリカのケニア、セイシェル、モーリシャスなど10ヶ国、中南米のアルゼンチン、チリ、コスタリカを含む14ヶ国、中東のオマーンなどを含む4ヶ国、アジアではインドネシア、マレーシア、ネパール、フィリピン、シンガポール、タイを含む11ヶ国、東欧のウクライナである。これらの国・地域の当局は、外国人の入国に際し保険証明に新型コロナ感染の際の諸費用(ホテル隔離、帰国費用などを含む)保証が含まれることを要求している(同)。

◆シニア世代に厳しい条件
 フランスの保険比較サイト『Insurly』は、フランス人旅行者向けに保険料金の例を挙げている。それによれば、ドバイに10日間旅行する25歳は27ユーロ、15日間ブラジルを旅する30歳は48ユーロ、イスラエルに30日渡航する60歳は70ユーロといった具合だ。当然ながら値段は年齢、行き先、滞在期間で変化する。キャンセル保険を加えるなら、さらに旅行費用の3~6%が加算されるとしている。

 旅行費用がかさむのも痛いが、それ以前にシニア世代に厳しいのが年齢制限だ。というのも、国によっては、旅行保険に年齢制限を設けているからだ。たとえば、フランスでは、「65歳、72歳、あるいは75歳を上限とする(旅行)保険がほとんど」である(フィガロ紙)。さすがに超高齢社会の日本には、70歳以上でも入れる海外旅行保険があるが、それでも「補償の金額に上限があり、選べるプランが減る」可能性があり、「持病や既往症があり通院中・治療中や薬の服薬中」だと加入できないケースが多い(損保ジャパン)。

 ウィズ・コロナの時代が来ても、シニア世代の旅行客が闊歩する風景はなかなか戻りそうにない。

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Text by 冠ゆき