飲み物に薬物混ぜて性的暴行、英で被害続出 ドリンク・スパイキングの手口も多様化

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◆名乗りづらい被害者たち
 スパイキングの被害は大きく報じられているが、万一被害にあった場合の対処法はまだ浸透の途上だ。ブリストル市議会のナイトタイム・エコノミー顧問であるカーリー・ヒース氏は、来場者が被害を申し出た際、バーやクラブなどが対処法を理解していないことが問題になると指摘する。ヒース氏は英BBCのニュース番組『ニュースビート』に対し、「ドラッグは12時間以内に体外へ排出されるため、(薬物)検査を受けられる猶予は短いことがわかっています」と述べる。主催側はスパイキング被害の報告を信用し、タイムリーに対処することが求められる。

 また、そもそも事件の性質上、被害側が声を上げづらいことも課題だ。ゴータム准教授らのチームがSNS上で実施した調査では、自分または友人がスパイキングの被害に遭ったことがあると回答した人の割合は91人中81人にのぼったという。うち25人は回答者自身が被害を受けていた。しかし、警察に通報したと回答した割合は、25人中わずか5人となっている。ゴータム准教授は「タイムリーな報告が肝要であり、検査の有効性を確保するため被害者は適切な時間内に名乗り出る必要がある」と述べる。

◆クラブ側の対策は
 安全にナイトライフを楽しめる環境を求め、人々は抗議行動に出ている。イギリスの一部ではナイトクラブをボイコットする動きがある。BBCはこのほか、ドラッグの検出キットの配布や、手荷物検査の実施など、店舗ごとに対策が取られ始めていると報じる。手荷物検査は多くのナイトクラブですでに実施されているが、法的な義務付けが議論されている。

 個人レベルの対応としては、男女問わず自身のドリンクから目を離さないことが基本的な防護策となる。また、スコッツマン紙によると、クラブ側がドリンク・ストッパーを提供する動きも広がりつつあるという。ビンの口に装着してストローと開口部の隙間を埋めるもので、隙を見ての混入を難しくする。

 スパイキングについては注射針で薬物を投与するニードル・スパイキングが新たな手口として認識されつつあるが、古くからあるドリンク・スパイキングもナイトライフの敵として引き続き脅威になっているようだ。

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Text by 青葉やまと