レイプドラッグ注射「ニードル・スパイキング」、英で被害続発 女性を狙う新たな手口
◆「スパイクのエピデミック」
以前からバーなどにおいて、ドリンク・スパイキングと呼ばれる手口が横行していた。相手の意識と身体の自由を奪う、デートレイプドラッグと呼ばれる部類の薬物をドリンクに混入するものだ。ニューヨーク・タイムズ紙はBBCの調査結果を引き、2015年からの4年間で、イングランドとウェールズにおいて2600件のドリンク・スパイキングが報告されていると述べている。
今回の一連の被害は、こうした行為への警戒が高まるにつれ、その手法を経口ではなく注射に変えたものとみられる。英インデペンデント紙は数名の被害者の証言として、意識混濁の前に引っ掻かれたような痛みを感じたと報じている。現地を管轄するノッティンガムシャー郡警察によると、ここ数週間で12件の被害が報告されているという。被害者の大半は女性の学生だが、なかには若い男性が被害者となった事例もある。
ドリンク・スパイキングと合わせると、被害数はさらに膨らむ。英ガーディアン紙(10月27日)は、過去2ヶ月間で計254件の事例が起きたと報じている。記事によると「スパイクのエピデミック」に対し若者のあいだで不満が高まり、ナイトクラブのボイコットやスパイキングを難しくするアイテムの提供などを求めるデモに発展している模様だ。
◆性的被害に懸念
ニードル・スパイキングを受け、友人の介助を受けられない場合、性犯罪の被害に遭うことが考えられる。イギリス警察署長協議会の性犯罪担当者は、ニードル・スパイキングの実行者が性的動機を持っていると考えることは「妥当な想定」であるとの見解を示している。被害者のサラさんはBBCの取材に対し、「なぜこんなことが続いているのか訳がわからないし、ぞっとするようなことです。ドリンクには蓋をできますが、針を刺されることなんてどうやって防げるというのでしょう」と述べ、防ぎ難い性犯罪のやり口に戸惑いをあらわにした。
デートレイプドラッグを打たれた場合、身体の異変を感じることで、事後的に気づくことができる可能性がある。インデペンデント紙は、平衡感覚の異状、視覚的な異変、嘔吐感や意識喪失などの症状がみられるとし、被害に遭った場合は警察や病院などに相談するよう勧めている。しかし、外出中に全身を覆うことが困難である以上、そもそも被害を防ぐ手段は限られる。
自分のドリンクから目を離さないなど、ドリンク・スパイキングへの対策が浸透してきた矢先の事件は、イギリスの若者たちを再び不安に陥れることとなった。
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