COP26がスーパースプレッダーイベントに? 開催地グラスゴーが警戒

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◆抗議活動家集結? 新たな感染源に
 会場での安全対策は万全という説明に対し、スコットランド自治政府のアドバイザーを務めるエジンバラ大学のリンダ・ボールド教授は、会場周辺での活動家によるウイルス拡散の可能性を指摘する。開催期間中、推定10万人の人々が抗議活動やほかの活動家のイベントに参加する可能性がある。これらの人々が一般市民と交わること、また一般家庭に滞在することなどを考えると、公衆衛生的観点から懸念されるとしている。(BBC

 大規模イベントと感染には、過去の事例で関連が指摘されている。イギリスでは今年6月にG7サミットが開催され、開催地のコーンウォールで感染者が急増した。スコットランドのグラスゴーでは、9月に音楽フェスティバル「TRNSMT」が開催された後、疫学調査で感染が確認された人のうち551人がこのイベントに参加していたことが判明している。また、2000人近くのスコットランドにおける感染が、サッカー大会「ユーロ2020」に関連していたこともわかっている。(ヘラルド紙

◆苦労してつかんだ正常化、イベントで台無しも
 スコットランドの感染者は8~9月のピーク時から大きく減少し、最近は1日2000人台で停滞、またはわずかに増加となっている。しかしボード教授は、COP26、人々の行動、ワクチンによる免疫の低下などの要因が重なり、感染拡大に逆戻りする可能性もあると述べる(BBC)。スコットランドではようやく社会が正常に機能し、映画館やコンサートにも行け、親戚や知人を家に呼べるようになった。これはワクチンなどのおかげで苦労して得た進歩であり、いま大規模なイベントを行うのは危険だと同教授は述べている(LBC)。

 エジンバラ大学のデヴィ・スリダール教授は、大規模イベントによる感染の増加は、限られた医療サービスに負荷をかけることになると指摘。結果的にさらなる規制が必要になってしまうとして、一都市に数万人規模が集まるイベントを警戒している。(LBC)

 ボード教授は、COP26 による市中感染の増加が表れるのは10~14日後としており、専門家の心配はしばらく続きそうだ。

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Text by 山川 真智子