「行方不明の白人女性」は特別扱い? インフルエンサー殺人事件、注目の理由

Courtesy of FBI Denver via AP

◆ソーシャルメディアが遺体発見の鍵に
 連邦捜査局(FBI)の2020年12月の統計によると、アメリカには同月時点で約8万9千人の行方不明者ケースが存在した。行方不明と言っても、すぐに発見される場合がもちろん多いだろうが、生死が判明しないまま行方不明者として何年もデータに残る人も多いはずだ。このような行方不明者ケースは、そのほとんどがニュースで取り上げられることはない。しかし、ギャビー・ペティートさんのニュースは当初から全米から注目を集め、連日のようにニュースやソーシャルメディアで取り上げられた。遺体が迅速に発見されたのも、家族でたまたま事件現場を訪れ、ペティートさんのバンを偶然撮影したYouTubeクリエイターの動画が存在したからである。

 このように、メディアで大々的に取り上げられ、人々の注目を集めることで、事件の解決が早まることは多い。しかしペティートさんの事件が全米だけでなく世界でも異様なほどの注目を集めたため、それが「不公平だ」という意見を口にする人が増えた。ペティートさんと婚約者男性は若くルックスの良い白人系だが、黒人やラテン系、アジア系などのアメリカ人、または高齢者などが行方不明になっても、メディアの注目を受けることはほとんどないのが理由である。

◆行方不明の白人女性を特別扱い?
 MSNBCは、ペティートさんに異様なほどの注目が集まったことが「Missing White Woman Syndrome(行方不明の白人女性症候群)」であると指摘した。ABCニュースによると、アメリカではマイノリティが行方不明になった場合、その5分の1程度しかニュースで報道されない。また、黒人やラテン系の子供たちが行方不明になった場合、犯罪絡み、または家出扱いされることも多いという。

 確かに、若くて可愛らしい白人女性であるペティートさんが行方不明になった時は、ほかの事件に比べて大きな注目を受けた。その後の遺体発見と身元確認、そして現在は婚約者男性の逃亡が連日のようにニュースで取り上げられている。

 しかしペティートさんは確かに白人女性だが、同じ白人女性の行方不明事件でも、大半が彼女のような扱いは受けていない。彼女の場合、元々ソーシャルメディアで活動していて動画や写真が多くメディアに出回っている。また、笑顔の素敵な好感度の高い女性であったこと、婚約者とアメリカ横断旅行をしていたという特殊な状況であったこと、そしてその様子を逐一投稿していたことが関係しているのではないだろうか。つまり、すでに自らソーシャルメディアに多く露出していたことで、一種セレブのような存在として「彼女を知っている」という気になっていた人が多く存在していたからこそ、皆の注目や同情を受けたのである。そして、婚約者と仲良く旅している様子もソーシャルメディアに映し出されていたことで、後に2人の関係がドメスティック・バイオレンス、そして殺人事件にまで発展したインパクトが非常に強かったのである。

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Text by 川島 実佳