それでもワクチン接種したくないフランス人の理由 義務化、衛生パス導入に反対

ワクチン接種義務化に反対する医療従事者(パリ、14日)|Francois Mori / AP Photo

◆衛生パス反対派は反ワクチンとは限らない
 マクロン大統領の7月のスピーチ以来、ほぼ毎週同国では衛生パス反対デモが全国各地で繰り広げられている。ただし、デモ参加者はそれほど多くなく、いまでは週を追うごとに減少している。たとえば、前回9月11日のデモ参加者は約12万1000人と、前週と比べ2万人少なかった。

 これらの衛生パス反対派は、実は必ずしもワクチン反対派とは限らない。ワクチン反対派のなかで最も強硬な意見を持つのは、いわゆる陰謀論を信じる筋金入りの反ワクチン派だ。だがそういう人は少数であり、「一番多いのは、多くの情報に翻弄されてどうすればいいかわからなくなっている人々」だ(ラ・クロワ紙、8/14)。実際ワクチンを打たない人のインタビューを見ると、もう少し様子を見てから決めたいと考えていたり、政府が信用できないためにワクチン接種に踏み切れないでいる人が案外多いことがわかる。

 ラ・クロワ紙も指摘するように、医師よりも看護士や介護士のワクチン接種率が低いのは、医師のほうが情報判断をしやすいバックグラウンドを持っていることと無関係ではないだろう。また筆者の周りには、反ワクチンではないが、反mRNAワクチンだという人もある。そのため、mRNA以外のワクチンで、しかもフランス製のものが出回るまで待ちたいというのが彼らの希望だ。

◆「自由」という言葉に過敏なフランス人
 そのことはつまり、ワクチンに反対なわけではないが、衛生パス導入には反対だという人の存在を意味する。彼らが抗議するのは「自由の剥奪」だ。つまり衛生パスの有無でレストランや一部施設を利用できるかどうか決められるのは、政府による独裁であり横暴であるという主張だ。そこにはひところ盛り上がった「マスク着用義務への反抗」デモと同じ理屈を見出すことができる。

 9月15日からの措置をめぐり、仕事ができなくなる医療従事者が出るため、ただでさえ人手が足りないといわれる医療がさらに逼迫するのではないかという懸念の声も出ていたが、大学病院医療委員会のプリュヴォ会長は、ある程度プランを見直す必要はあっても病院は持ちこたえるだろうと、楽観的な見通しを示している(フランス・アンフォ、9/15)。

 一方、この措置に関するネット上の反応は、あくまで反政府・反マクロンを唱える罵詈雑言と、医療従事者のワクチン接種義務は当然のこととする意見の二手に大きく分かれている。わずかながら、結局はワクチンを打ちたくない医療従事者の「(偽の)病欠」が増えるだけだと皮肉る声も見られるのは、いかにもフランス的というべきか。

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Text by 冠ゆき