ワクチン接種拡大図る米国 インフルエンサー起用や企業による義務化も
◆ワクチン反対者と接種拡大キャンペーン
米国では基本的にワクチンにアクセスしやすい状況ではあるが、さまざまな理由により、ワクチン接種の対象年齢以上の人口の約3割がワクチンを接種していない状況だ。理由は、ワクチンそのものに対する不信・反対といった個人的なものと、政府機関当局などに対する不信・反対といったものがある。なかには、コロナワクチンが米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)に正式に承認されていない(FDAはワクチンの緊急使用許可を発行)といった比較的論理的な理由もあるが、陰謀説やSNSなどによって拡散されるデマ情報を信じている人も少なくない。ワクチンによってなにか電子的なものや磁気を帯びたものを注入されたり、ウイルスを注入されたり、DNAを改ざんされるといったようなデマ情報が存在している。
ホワイトハウスは、ワクチンに関するデマ情報の拡散にフェイスブックが大きく寄与しているとし、防止のための措置をフェイスブックに求めている。一方で、同局は50人以上のセレブリティやSNSのインフルエンサーに依頼し、とくに若者に対してのコロナワクチン接種の促進キャンペーンを進めている。たとえば、シンガーソングライターで女優のオリヴィア・ロドリゴ(18歳)がその一人だ。彼女のインスタグラムのフォロワー数は約1580万、ユーチューブ・チャンネルのフォロワー数は670万人いる。
政府のワクチン接種拡大の方針を受け、企業も接種拡大キャンペーンに参画している。大手ドーナツ・ショップのクリスピー・クリームは、今年3月、ワクチン接種を一回でも完了した人に対して、年内毎日ドーナツ1個をプレゼントするというキャンペーンを開始した。ほかにも無料ビールや賞金といったさまざまな施策が展開された。一方、政府は、企業の次のステップとして、インセンティブではなくワクチン接種の義務化を要望しているようだ。先月には連邦政府スタッフに対しての、ワクチン接種証明の提示の義務化を発表した。大企業では、ウォールマート、グーグル、ユナイテッド航空などがスタッフのワクチン接種義務化の方針を発表している。
アメとムチの両方の施策展開、大企業が主導するワクチンの義務化、そしてSNSを活用した正しい情報の拡散によって、どこまで米国のワクチン接種率が拡大するかが注目される。
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